ここ数年、ランサムウェア攻撃が急増しており、多くの企業は早急な対策に迫られています。
特に、ITリソースが限られている中小企業や情報システム部門が少人数の企業にとって、ネットワークの安全性を確保することは容易ではありません。
そこで、ネットワークへのアクセスを厳密に制御する「NAC(ネットワークアクセス制御)」が有効な手段として注目されています。
本記事では、NACの基本機能やランサムウェア対策としての効果、少人数体制でも実施しやすい導入ポイントについて解説します。
NAC(ネットワークアクセス制御)とは?
NAC(ネットワークアクセス制御)とは、企業ネットワークに接続するデバイスやユーザーのアクセスを制御し、ネットワーク上の資産を保護するための技術です。
企業のネットワーク内に侵入しようとする不正なデバイスや信頼できないユーザーを排除することで、セキュリティを強化する役割を持っています。
ネットワークにアクセスする前にデバイスやユーザーを検証し、許可がない場合はネットワーク接続を拒否することで、潜在的な脅威を防ぎます。
NACが提供するアクセス管理機能は、ランサムウェアをはじめとするマルウェアの侵入を未然に防ぐことができるため、特にセキュリティ意識の高い企業にとって必要不可欠な要素となっています。
NACの基本機能とその仕組み
NACには、主に以下の3つの基本機能があります。
認証
ネットワークに接続するデバイスやユーザーの身元を確認します。
これにより、信頼できる者のみがアクセスを許可されるようになります。
許可
ユーザーやデバイスの身元が確認された後、そのアクセス範囲を設定します。これにより、権限のないユーザーが重要なデータにアクセスすることを防ぎます。
ポリシー適用
アクセス可能な範囲やネットワークの利用条件をポリシーとして定義し、リアルタイムで監視・適用します。
これにより、セキュリティリスクが発生した場合に即時対応が可能です。
NACは、ネットワークに侵入する前の段階でデバイスやユーザーの確認を行い、企業の情報資産を保護します。
特に中小企業にとっては、少人数でも導入しやすいシステムが多いため、導入のハードルが低い点が特徴です。
NAC導入のメリット・デメリット
NACは、企業のセキュリティを強化するための重要なツールですが、導入を検討する際には、そのメリットとデメリットを十分に理解することが大切です。
以下では、導入の主なメリットとデメリットを紹介します。
メリット
不正アクセスの防止
NACは、ネットワークにアクセスするデバイスやユーザーの認証を行い、信頼性の低いデバイスや不正なアクセスをブロックします。
これにより、外部からの攻撃や内部からの不正アクセスを未然に防ぐことができます。
ランサムウェアやマルウェアの拡散防止
ネットワークに接続した際、NACはデバイスのセキュリティ状態を確認します。セキュリティが脆弱なデバイスを隔離することで、ランサムウェアなどのマルウェアの拡散を防ぐ効果があります。
特に、感染がネットワーク内で広がることを防ぎます。
ネットワークの可視化
NACは、接続されたデバイスやユーザーをリアルタイムで監視するため、企業のネットワークの状態を常に把握できます。
これにより、異常なアクセスや潜在的な脅威を早期に発見でき、迅速な対応が可能になります。
デメリット
導入コストと初期設定の手間
このシステムを導入する際は、初期費用がかかる場合があります。
また、ネットワークの規模や複雑さに応じて、設定や調整に時間と労力を要することもあります。
特に、ITリソースが限られている企業にとっては、この初期設定が負担となることがあります。
既存システムとの互換性の問題
既存のネットワークインフラやデバイスとの互換性が問題になることがあります。
特に古いデバイスやシステムがある場合、導入がスムーズに進まないことがあります。
事前に環境を確認し、必要な調整を行う必要があります。
管理の複雑さ
NACの運用には、ネットワーク全体の監視とアクセス制御の管理が求められます。
大規模なネットワークや多種多様なデバイスが存在する企業では、管理が複雑になりがちです。
このため、専任のITスタッフや管理者が必要となる場合があります。
NACの導入には、多くのセキュリティ強化のメリットがありますが、同時にコストや管理の負担などのデメリットも存在します。
自社の規模やニーズに合わせて、導入のメリットを最大化し、デメリットを最小限に抑えるためには、事前の準備と運用体制の構築が重要です。
NACはランサムウェア対策に有効
ランサムウェアは、ネットワーク上の一つのデバイスが感染することで、他のデバイスやシステムへと拡散します。
NACを導入することで、感染デバイスを早期に隔離し、ランサムウェアの拡散を防ぐことが可能です。
また、認証プロセスにより、外部からの不正アクセスやマルウェアの侵入を防ぐため、ランサムウェアの初期感染を抑制する効果があります。
ランサムウェア対策として導入するメリット
ランサムウェア対策として、ネットワークアクセス制御を導入する場合は、以下のようなメリットがあります。
感染デバイスの即時隔離
感染デバイスを検出し、他のデバイスやネットワークから即座に隔離することで、被害の拡大を防ぎます。
未許可のアクセスを防止
認証機能により、信頼性の低いデバイスや不審なユーザーのネットワークアクセスを遮断し、感染の可能性を排除します。
セキュリティ状態の監視による感染リスクの軽減
ネットワークに接続されたデバイスのセキュリティ状態をリアルタイムで監視できます。
これにより、状態の不備を早期に発見し、ランサムウェア感染リスクを軽減することが可能です。
NACによって、ランサムウェアの初期感染や拡散を抑えることで、被害を最小限に抑えることができます。
情シスがいない、または少ない企業向けのNAC導入のポイント
ITリソースが限られている企業にとって、複雑なシステム導入は避けたいものです。
NAC導入にあたっては、操作が簡便で、サポートが充実している製品を選択することが重要です。
また、クラウドベースのNACサービスを利用することで、初期コストを抑え、管理負担を軽減できます。
導入の際に考慮すべきポイントには以下が挙げられます:
クラウドベースのNACの活用
初期コストを抑えられ、メンテナンスの手間も軽減されるため、小規模なIT体制でも負担なく導入が可能です。
自動化されたアクセス管理機能の利用
自動化機能を活用することで、少人数のIT体制でも効率よくアクセス管理が可能になります。
分かりやすいインターフェース
直感的に操作できるインターフェースを持つNACソリューションを選択することで、専門知識がなくても運用が可能になります。
段階的な導入
全社一斉ではなく、部門ごとや重要度の高いシステムから段階的に導入することで、リスクと負担を分散させることができます。
他ソリューションを併用して多層防御を実現
NACは単体でも効果的なセキュリティ対策ですが、他のソリューションと組み合わせることで、より強力な多層防御を実現できます。
特に、ネットワーク内外からの脅威に対して多角的な保護を構築できるため、ランサムウェアのような進化するサイバー攻撃に対しても強力な防御力を発揮します。
例えば、各エンドポイントでの動作をリアルタイムで監視・対処するEDRと併用すると、ネットワークとエンドポイントの両方を監視・保護できるため、企業全体の防御力が向上します。
EDRがエンドポイント上でランサムウェアの兆候を検知した場合、EDRはそのデバイスを隔離し、感染が他のデバイスやシステムに拡大する前に対処します。
さらに、NACと連携させることで、感染したエンドポイントがネットワークに再接続するのを防ぎ、感染範囲の限定がより強化されます。
また、マイクロセグメンテーションとの組み合わせも効果的です。
マイクロセグメンテーションは、エンドポイントごとに細かく分割して、セグメント間のアクセスを制限して保護する技術です。
NACによってネットワークに入るアクセスを監視し、不審なデバイスをブロックする一方で、マイクロセグメンテーションによりネットワーク内部でのアクセス範囲も制限することで、感染したデバイスが別のセグメントに影響を及ぼすリスクを低減できます。
この組み合わせにより、万一ランサムウェアが内部に侵入した場合でも、被害範囲を最小限に抑えることが可能です。
まとめ
NAC(ネットワークアクセス制御)は、企業のセキュリティを大幅に強化し、ランサムウェアや不正アクセスからネットワークを保護するための有効な手段です。
導入によって、外部からの脅威だけでなく、ネットワーク内での感染拡大を防ぐことができます。
特に、ITリソースが限られた企業にとっては、シンプルで効果的なセキュリティ対策としてNACの導入を検討する価値があります。
ランサムウェア対策やセキュリティの強化を目指す企業にとって、NACは不可欠なツールとなるでしょう。
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【参考サイト】
・IT用語辞典 e-Words┃ネットワークアクセス制御(NAC)とは
この記事の著者:電巧社セキュリティブログ編集部
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