UEBA(ユーザーエンティティビヘイビア分析)とは?SIEMやUBAとの違いも解説

UEBA(ユーザーエンティティビヘイビア分析)とは?SIEMやUBAとの違いも解説

サイバー攻撃の巧妙化が進む現在、従来のセキュリティ対策だけでは十分とは言えなくなってきており、特にランサムウェア攻撃や内部脅威への対応は、多くの企業にとって大きな課題です。

そこで近年注目されているのがUEBAという技術です。

本記事では、UEBAの基本的な仕組み、SIEMやUBAとの違い、導入のメリット、そしてマイクロセグメンテーションとの組み合わせについて解説します。

UEBAとは?

UEBA(User and Entity Behavior Analytics、ユーザーエンティティビヘイビア分析)は、ユーザーやエンティティ(端末やアプリケーションなど)の振る舞いや行動パターンを分析するセキュリティ技術です。

AIや機械学習を活用し、通常の行動パターンから外れる異常を検知します。

従来のセキュリティシステムは、既知の攻撃手法を基にした「シグネチャベースの検知」が主流でしたが、UEBAは未知の脅威や内部からの攻撃にも対応できる点が特徴です。

従来手法との違い

  • シグネチャベース:過去に確認された攻撃手法をデータベース化して検知。新しい攻撃手法に弱い
  • 振る舞いベース(UEBA):通常の行動パターンを学習し、異常を検知。未知の攻撃にも対応可能

これにより、ランサムウェアや内部不正など、従来の手法では見逃しがちな脅威を早期に発見できます。

UEBAの主な分析対象

UEBAは、その名の通り、ユーザーとエンティティの行動データを分析して、不正アクセスなどを検知します。

ここでは、UEBAが主に分析対象とする3つの要素について詳しく解説します。

UEBAの分析対象例

ユーザーの行動データ

UEBAの中心的な役割は、ユーザーの行動を詳細にモニタリングし、異常を検知することです。 

例えば、以下のような行動データを収集・分析します:

  • ログインパターン(日時、場所、使用デバイスの変化)
  • システムやアプリケーションへのアクセス頻度
  • ファイルやデータの閲覧・変更・削除の履歴

これらのデータから、例えば「通常は日本からアクセスするユーザーが突然海外からログインした」などの異常を検知することができます。

エンティティ(端末・デバイス)の動作データ

エンティティとは、企業のネットワークに接続されている端末やデバイスを指します。 

UEBAでは、例えば次のようなデバイスの動作を監視します:

  • サーバーや端末のCPUやメモリ使用率の異常な増加
  • IoTデバイスやプリンターなどの不正な通信
  • ネットワークトラフィックの急激な変化や増加

これにより、例えば「マルウェアに感染した端末が異常に大量のデータを外部に送信している」などのインシデントを早期に発見できます。

システムおよびアプリケーションの動作ログ

ユーザーやデバイスだけでなく、企業内で利用されるシステムやアプリケーションの動作もUEBAの分析対象です。 

例えば以下のような点を分析します:

  • アプリケーションの予期しない停止やクラッシュ
  • 不審な権限昇格(管理者権限の取得)
  • サービスやAPIへの異常なリクエスト

この分析により、システム内部で進行中のセキュリティ侵害を早期に検知し、被害を最小限に抑えることができます。

これらの動作データを統合的に分析することで、UEBAは従来のルールベースのセキュリティ対策では見逃されやすい異常行動を検知します。

企業はこれらの分析結果をもとに迅速な対応策を講じることが可能です。

UEBA導入で企業のセキュリティ体制はどう変わる?

UEBAを導入することで、企業のセキュリティ体制にどういった影響を与えるのでしょうか?

その影響について、3つのポイントで解説します。

ポイント1:ランサムウェアやゼロデイ攻撃への対応力

ランサムウェアやゼロデイ攻撃の場合、ソリューションがまだ対応していない未知の攻撃方法が使われることがあり、攻撃者が既存のセキュリティ対策をすり抜ける可能性があります。

しかし、UEBAは異常な行動をリアルタイムで検知するため、これらの攻撃への初動対応が可能です。

ポイント2:内部脅威への防御

企業の内部から発生する不正行為や情報漏洩リスクも重要な課題です。

UEBAは、社員の行動履歴や端末の使用状況をモニタリングし、通常と異なる操作を検知します。

ポイント3:ハイブリッドワーク時代のセキュリティ強化

リモートワークが広がる中、従業員のアクセス場所やデバイスが多様化しています。

UEBAはネットワーク外部からのアクセスも監視するので、多様な働き方にも対応したサイバーセキュリティを提供します。

SIEMやUBAとUEBAの違いを比較解説

UEBAを説明する際、よく比較されるのがSIEMとUBAですが、それぞれとUEBAはどのように違うのでしょうか?

以下では、SIEMやUBAとUEBAの違いを詳しく解説します。

SIEMとUEBAの違い

SIEM(Security Information and Event Management、セキュリティ情報イベント管理)は、ログの収集、保存、分析、可視化に特化したツールです。

ネットワーク全体から収集したログデータをリアルタイムで監視し、セキュリティイベントを統合的に管理することで、攻撃や異常な活動の兆候を把握するのに役立ちます。

しかし、SIEMはあくまで「データの収集・分析」が中心であり、行動ベースの異常検知には特化していません。

一方、UEBAは、ユーザーやエンティティ(デバイスやアプリケーションなど)の行動パターンに注目し、異常な動きを検知することに特化しています。

UEBAはAIや機械学習を活用して行動の「通常時」と「異常時」を比較し、SIEMでは見逃される可能性のある高度な脅威(例:内部脅威、ゼロデイ攻撃)を補足する能力があります。

具体的には、UEBAは以下の点でSIEMを補完します:

高度な異常検知能力
機械学習を用いて振る舞いを継続的に学習し、既知の署名やルールに依存しない脅威検知が可能です。

自動化された分析
SIEMが収集した膨大なログデータから、異常行動のパターンを抽出することで、効率的なセキュリティ運用を実現しています。

SIEMとUEBAは競合する技術ではなく、相互補完的な関係と言えます。SIEMが「広範なデータ収集と可視化」を担い、UEBAが「高度な分析と異常検知」を担うことで、セキュリティ体制を強化できます。

UBAとUEBAの違い

UBA(User Behavior Analytics、ユーザー行動分析)は、ユーザーの行動を分析するための技術で、主に「ユーザーがどのような操作をしているか」に焦点を当てています。

例えば、ある従業員が普段アクセスしないデータに頻繁にアクセスしている場合、その行動を「異常」として検知するのがUBAの役割です。

しかし、UBAはあくまで「ユーザー」に限定されており、エンティティ(デバイスやアプリケーション)の行動までは対象に含めていません。

UEBAはUBAの進化形であり、以下の点で機能が強化されています:

エンティティの行動分析
ユーザーだけでなく、IoTデバイス、端末、アプリケーションなどのエンティティも分析対象に含め、セキュリティ範囲を拡大。たとえば、あるIoTデバイスが普段使用しないネットワークに接続した場合、その動きを異常とみなすことが可能です。

総合的な脅威検知
ユーザーとエンティティの動きを組み合わせて分析することで、ランサムウェアや内部脅威といった高度な攻撃を検知する能力を向上しています。

複雑な環境への対応
クラウドやオンプレミスなど、異なる環境間での一貫した脅威検知が可能です。

UEBAのこの進化により、企業は単なる行動分析を超えた包括的なセキュリティ対策を実現できるようになりました。ユーザーとデバイスの動きを関連付けることで、サイバー攻撃の兆候をより早く、正確に把握できます。

これらの技術の違いを理解することで、自社のセキュリティ環境に最適なソリューションを選択しやすくなります。

次のセクションでは、UEBA導入時の具体的なメリットと課題について解説します。

UEBAのメリットと導入の課題

実際にUEBAを導入した場合、どのようなメリットや課題があるのでしょうか?

ここでは、具体的なメリットと導入の課題を紹介します。

UEBAのメリットと導入の課題

メリット

人手不足の解消
AIを活用することで、手動での異常検知作業が不要になり、情シス部門が1人でも効率的な運用を実現します。

異常検知の精度向上

ユーザーやエンティティの行動パターンを分析することで、従来のルールベースの手法では見逃されやすい脅威を高精度で検知が可能です。

他ソリューションと併用しやすい

EDRやマイクロセグメンテーションなどのほかソリューションとの併用しやすく、既存のセキュリティと組み合わせて強化することができます。

例えばUEBAとマイクロセグメンテーションを組み合わせることで、異常行動を検知した直後にネットワークの分離や制限を即座に実行できます。

ランサムウェアが検知された場合でも、その感染が広がる前に被害を最小限に抑えることが可能です。

導入時の課題

初期導入コストが高め
AIや機械学習モデルの導入には一定のコストがかかり、中小企業には負担が大きい場合があります。

運用に必要なデータ環境の整備が必須
適切な分析を行うには、ログや行動データを十分に収集・保管できるインフラが必要となる可能性があります。

既存システムとの統合に時間がかかる場合も

導入後、既存のセキュリティツールや運用環境と連携させるために追加の調整や設定が必要になることが多いです。

まとめ

UEBAは、これまでのセキュリティ技術では対応しきれなかった課題を解決する次世代の技術です。

特にランサムウェアや内部脅威に対して高い効果を発揮します。

また、SIEMやマイクロセグメンテーションと組み合わせることで、さらに強力な防御体制を構築可能です。

中小企業であっても、セキュリティの強化を図るためにUEBAを導入し、新たな脅威に対応していきましょう。

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セキュリティ担当者がいない企業でも導入しやすく、コスト削減と運用の簡素化を実現しつつ、効果的なランサムウェア対策を可能にします。

ぜひ貴社のサイバーセキュリティソリューションとして、ご検討ください。

【参考サイト】
IT用語辞典 e-Words┃UEBAとは
Microsoft┃SIEMとは?

この記事の著者:電巧社セキュリティブログ編集部

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