ダークウェブとは?その実態と企業が取るべき対策を解説【ColorTokensブログ 日本語翻訳】

ダークウェブを暴く: 神話、現実、そしてあなたの知らないリスク

本記事では、アメリカのサイバーセキュリティ企業 ColorTokens(カラートークンズ)社が発信しているセキュリティ情報(英文)を、日本の代理店である株式会社電巧社が許諾を得て日本語に翻訳し、要約して掲載しています。

※本記事は、掲載後に修正される可能性がございますので、ご了承ください
※過去の記事もアップしておりますので、現在の情報と異なる可能性がございます。記事下の最終更新日をご参考ください


ダークウェブを暴く: 神話、現実、そしてあなたの知らないリスク

インターネットは広大です。

私たちの多くは、Facebook、Google、Instagram、Netflixといったサーフェスウェブ(表層ウェブ)を日常的に閲覧しています。

しかし、その検索エンジンの結果には表示されない、もう一つの世界が存在します。

暗く、謎めいており、多くの人に誤解されているインターネットの一角――それがダークウェブです。

もし、ダークウェブが単なる犯罪者の温床ではなく、プライバシー保護や言論の自由、さらには業のセキュリティにとっても不可欠なツールだとしたら、どう思うでしょうか?

このブログでは、ダークウェブの実態を深く掘り下げ、誤解と事実を明確にし、それが企業にどのような影響を与えるのかを解説します。

あなたのビジネスにとって、どのように活用できるのか?

そして、注意を怠るとどのような危険があるのか? 予想とは異なるかもしれませんが、ぜひ最後までお付き合いください。

1.ダークウェブとは何か?

まずは基本から押さえましょう。

ダークウェブとは一体何なのでしょうか?

インターネットを氷山に例えてみましょう。

サーフェスウェブ(表層ウェブ)は水面上に見える部分で、AmazonやYouTubeなど、私たちが日常的に利用する公開ウェブサイトが含まれます。

ディープウェブ(深層ウェブ)はその下に広がる部分で、パスワードで保護されたサイトや、検索エンジンにインデックスされていないプライベートなデータベースなどが含まれます。

これには、メールアカウント、オンラインバンキング、社内ネットワークなど、一般公開されていないコンテンツも含まれます。

しかし、ここで重要なのがダークウェブです。ダークウェブはディープウェブのさらに奥深くに隠された領域であり、意図的に秘匿され、通常はTorのような特殊なツールを使用しなければアクセスできません。

検索エンジンにはインデックスされておらず、極めて高いプライバシーと匿名性を提供するために設計されています。

このため、追跡されることなく自由にコミュニケーションを取ることができる空間となっています。

ダイアグラム:インターネットのさまざまなレイヤー

ダイアグラム:インターネットのさまざまなレイヤー

つまり、インターネットの氷山モデルは次のように分類されます。

  • 水面上:サーフェスウェブ(表層ウェブ)
    公開されているウェブサイト(Google、Facebook、Amazonなど)
  • 水面下:ディープウェブ(深層ウェブ)
    検索エンジンにインデックスされていないプライベートなコンテンツ(メールの受信トレイ、有料サービス、データベース、企業の内部ネットワークなど)
  • さらに深部:ダークウェブ
    ディープウェブの中でも特に隠された部分。Torなどの特殊なツールを使わなければアクセスできず、匿名性の高い通信に利用されることが多い。

ここで意外な事実ですが、ダークウェブのすべてが違法というわけではありません。

実際には、プライバシーや匿名性を必要とする人々――ジャーナリスト、活動家、そして企業――が利用することもあります。

たとえば、パナマ文書(Panama Papers)のケースでは、安全な通信プラットフォームとしてTorなどの技術が使用されたと考えられています。

ダークウェブそのものがリークの手段だったわけではありませんが、情報源を保護し、機密性を確保するために重要な役割を果たしました。

しかし、ダークウェブは決して安全な場所とは言い切れません。

違法マーケット、ハッカーの雇用サービス、盗まれたデータの取引といった犯罪活動も広がっています。

この点については、次のセクションで詳しく見ていきます。

2.ダークウェブの仕組み:その秘訣とは?

ダークウェブにアクセスするには、Tor(The Onion Router)のような特殊なツールが必要です。

Torは、まるで透明マントのようなものと考えてください。

使用すると、インターネット上の通信が暗号化され、世界中の複数の「ノード」(中継ポイント)を経由してランダムに転送されます。

その結果、ユーザーの身元や位置情報をほぼ特定不可能にすることができます。

この技術はオニオンルーティング(onion routing)と呼ばれ、匿名性の高いネットワークを構築します。

ユーザーは隠されているため、第三者がオンライン活動を監視することは困難になります。

強力な仕組みですよね?

だからこそ、抑圧的な政権下で活動するジャーナリストや、機密情報を扱う調査員などが活用しているのです。

たとえば、2016年、米国のニュースメディアProPublicaは、ダークウェブ上にオニオンドメイン(.onion)を開設しました。

その目的は、内部告発者やリスクを抱えた情報提供者が、安全にサイトへアクセスできるようにするためです。

政府の監視を恐れることなく、重要な情報を公開できる手段を提供したのです。

もしジャーナリストが、言論統制の厳しい国で汚職を調査している場合、ダークウェブの仕組みを利用することで、安全を確保しながら取材を進めることができます。

このように、ダークウェブは表現の自由を守るための強力なツールとなる一方で、慎重に扱うべき側面もあります。

3. 企業がダークウェブを活用する方法

え?ダークウェブは犯罪者のためのものじゃないの?

その通りです。ダークウェブは違法行為と結びつけられることが多いですが、実は企業にとって戦略的に活用できるリソースでもあります。

脅威を監視するだけでなく、情報収集やビジネスの安全確保、デジタル競争での優位性を確保するためにも利用できます。

以下、その具体的な方法を紹介します。

脆弱性やエクスプロイトの特定

脆弱性を悪用するのは攻撃者だけではありません。

企業がダークウェブ上の会話や活動を監視することで、自社の業界を狙った新たなエクスプロイト(脆弱性の悪用手法)を特定することができます。

この情報を活用すれば、攻撃を受ける前にシステムのパッチを適用し、防御を強化することが可能になります。

機密通信の保護

今日のセキュリティ対策は、ファイアウォールやアンチウイルスソフトだけでは不十分です。

プライバシーの保護も極めて重要です。

企業にとって、顧客情報や企業戦略などの機密情報の漏洩を防ぐことは不可欠です。

ダークウェブを監視することで、社内の機密情報が流出・売買されていないかを確認し、早期発見によって潜在的な情報漏洩を防ぐことができます。

また、Torのような特殊なツールを活用することで、企業はデジタル上の会話を安全に保ち、ハッカーや監視機関の目から守ることができます。

特に機密情報や極秘プロジェクトを扱う企業にとって、こうした安全な通信手段を活用することで、リスクの高い環境下でも情報のプライバシーを確保できます。

内部告発者の保護

もし従業員が倫理違反を報告したい場合、通常の手段では身元が特定されるリスクがあります。

ダークウェブは、内部告発者が完全な匿名性を保ちながら、機密文書を安全に共有できる手段を提供します。

企業がダークウェブ上に安全な通報ポータルを設けることで、従業員が報復を恐れることなく、不正行為やセキュリティ上の問題を報告できる環境を整えることができます。

検閲の回避

世界の一部の地域では、重要な情報へのアクセスが制限され、政府による厳しい監視が行われています。

ダークウェブは、こうした検閲を回避し、自由に情報を共有する手段を提供します。

特に抑圧的な環境下で活動する従業員、活動家、ジャーナリストは、ダークウェブを活用することで、政府の監視を受けることなく安全に通信できます。

グローバルに事業を展開する企業にとっては、制限のある地域にいる従業員が安全に情報にアクセスできるよう支援することが重要となります。

これにより、必要な情報を適切な相手に届けることができ、外部の干渉を防ぐことができます。

知的財産の盗難を追跡

ダークウェブは、企業の知的財産が違法に売買される場でもあります。

営業秘密や独自のソフトウェアが不正に流通していないかを監視することで、企業は知的財産の不正使用を素早く検出し、損害を最小限に抑えるための対策を講じることができます。

必要に応じて法的措置を取ることも可能です。

ただし、ここで注意すべき点があります。

これらの技術はプライバシーの保護や言論の自由を支援する強力なツールですが、同時に悪用されるリスクもあります。

ダークウェブは企業の盾となることもあれば、逆に攻撃者の隠れ蓑として利用されることもあります。

慎重に活用しなければ、企業にとって大きな脅威となり得るのです。

4. ダークウェブ:企業にとっての諸刃の剣

ダークウェブは企業のセキュリティを強化する手段となる一方で、慎重に扱わなければ重大なリスクをもたらす可能性があります。

その理由を見ていきましょう。

データ漏洩と情報の盗難

ダークウェブは盗まれたデータのマーケットになっています。

サイバー犯罪者が企業のデータ(顧客情報、財務記録、従業員の認証情報など)を盗むと、ダークウェブのフォーラムで売買されることがよくあります。

2024年に発生した代表的なデータ漏洩の一例が、MOVEit Transferの脆弱性を悪用した攻撃です。

金融機関や医療機関の機密データがダークウェブのフォーラムでオークションにかけられました。

攻撃者はMOVEitのファイル転送システムの脆弱性を突き、個人情報や財務データを流出させ、その情報を最高額で売り渡しました。

同じく2024年には、Change Healthcareのデータ侵害が発生し、患者の医療記録や保険情報などの機密データがダークウェブ上で取引されていることが確認されました。

サイバー犯罪とマルウェア

ダークウェブは、ハッカーの雇用サービスやマルウェアの売買が盛んな市場でもあります。

サイバー犯罪者は、ランサムウェアのツールや攻撃サービスを簡単に購入でき、それを用いて競合他社を標的にしたり、企業に対して身代金を要求したりします。

サイバー犯罪の経済的影響は非常に大きく、Cybersecurity Venturesの予測によると、2025年までにサイバー犯罪による世界的な被害額は年間10.5兆ドルを超えるとされています。

特にランサムウェアはその被害を拡大させている要因の一つです。

Contiのような大規模なランサムウェアグループが解散した後も、ランサムウェア・アズ・ア・サービス(RaaS)のモデルは依然として活発で、新たな犯罪者が次々と出現し、企業を標的にしています。

2024年には、Royal Ransomware Groupが重要インフラを標的とし、大規模なデータを人質に取って数百万ドル規模の身代金を要求しました。

このようなランサムウェアグループの台頭は、ダークウェブが依然として危険な犯罪活動の温床であることを示しています。

マルウェアやランサムウェアの開発者が短期間で利益を得られるため、この種の脅威は今後も増加していくと考えられます。

ブランドの毀損と信用の喪失

企業の内部データがダークウェブに流出すると、ブランドイメージに取り返しのつかないダメージを与える可能性があります。

顧客や取引先は、データ保護対策が不十分な企業を信頼しなくなるでしょう。

たとえば、2013年に発生したYahooの大規模なデータ侵害では、30億件以上のユーザーアカウントが流出しました。

しかし、この情報は2016年まで公表されず、最終的にダークウェブ上で流通することとなりました。

この事件により、Yahooのブランド価値は大きく低下し、企業の評判が回復することはありませんでした。

業務停止と重要システムへのアクセス不能

現在のデジタル環境では、ダークウェブがサイバー犯罪者の活動を支える重要な役割を果たしています。

ランサムウェアグループやマルウェア開発者は、ダークウェブを利用して攻撃ツールを販売したり、侵害されたデータを売買したり、さらには攻撃そのものをサービスとして提供することもあります。

たとえば、NotPetya攻撃では、Maersk、Merck、FedExといった大企業が標的となり、甚大な被害を受けました。

この攻撃は、ダークウェブのフォーラムで共有されていたツールや手法を活用して行われた可能性が高いとされています。

攻撃を受けた企業は、長期間の業務停止、数十億ドル規模の経済的損失、そして長期的な事業運営の混乱に直面しました。

ダークウェブがこのような脅威の温床となっている以上、企業は常にサイバー犯罪者の標的となる危険性を抱えているのです。

5. ダークウェブの脅威から企業を守る方法

企業を運営している場合、ダークウェブの脅威から身を守るために必要な対策は次のとおりです。

ダークウェブの監視

ダークウェブ上で、自社のブランド名、従業員の情報、機密情報が言及されていないかを監視するツールを活用しましょう。

情報漏洩や侵害を早期に検知し、さらなる被害を防ぐためには、積極的な監視が重要です。

従業員の意識向上とトレーニング

強力なパスワードの使用やフィッシング詐欺の見極め方など、サイバーセキュリティのベストプラクティスについて従業員に教育を行いましょう。

従業員の意識向上が、セキュリティ強化の第一歩となります。

強固なサイバーセキュリティ対策

機密データを暗号化し、ソフトウェアを定期的に更新し、侵入検知システム(IDS)やマイクロセグメンテーションなどの技術を導入しましょう。

強力なセキュリティ技術と適切なプロトコルを確立することが、データ漏洩や攻撃を防ぐために不可欠です。

結論:ダークウェブは思っているものとは違う

ダークウェブは完全に善でも悪でもなく、他のツールと同様に使い方次第の存在です。

一方では、プライバシーを保護し、機密通信を安全にし、企業の知的財産を守る手段となります。

しかし、もう一方では、サイバー犯罪者が脆弱性を悪用する温床にもなり得ます。

しかし、ここで重要なのは、ダークウェブがなくなることはないという現実です。

むしろ、デジタルプライバシーや通信の保護において、その役割はますます重要になっています。

ダークウェブのリスクを理解し、適切な対策を講じることが、企業がデジタル時代に成功するか、それとも次の被害者となるかの分かれ道となるかもしれません。

では、あなたの企業はダークウェブを活用して守る側に立つのか、それとも脅威として放置し、利用される側になってしまうのか――その選択が問われています。


翻訳元記事
Unveiling the Dark Web: Myths, Realities, and Risks You Didn’t Know About
最終更新日:2025/1/24
著者:Devasmita Das


この記事の著者:電巧社セキュリティブログ編集部

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