近年、企業のサイバーセキュリティは外部からの脅威だけでなく、企業内部の従業員や関係者が関与する「内部脅威」にも、対策する必要が出てきています。
内部脅威は、悪意のある従業員による不正アクセスだけでなく、過失による情報漏えいや攻撃者によるアカウント乗っ取りなど多岐に渡るため、非常に防御が難しい脅威となっています。
本記事では、内部脅威の種類やリスクを詳しく解説し、マイクロセグメンテーションなどを活用した効果的な防御策について紹介します。
内部脅威とは?
内部脅威(Insider Threat) とは、企業や組織の内部にいる従業員、契約社員、パートナー企業の関係者、元従業員などが、意図的または過失に引き起こすセキュリティリスクのことを指します。
内部の人物が持つ権限やアクセス権を悪用し、機密情報の漏洩、サイバー攻撃、システムの破壊、不正行為などを行う可能性があるため、外部からの攻撃と同様に深刻な脅威とされています。
内部脅威の種類
内部脅威は、大きく分けて 悪意のあるもの(意図的なもの) と 無意識のもの(偶発的なもの) に分類できます。

悪意のある内部脅威
内部者が組織に対して意図的に損害を与える行為を指します。
- データ窃取(情報漏洩):機密情報や顧客データを不正に持ち出し、競合他社に売却したり、個人的に悪用する
- サイバーテロ行為:企業のシステムを破壊したり、ランサムウェアを仕掛けたりする
- 詐欺・横領:経費の不正利用や財務データの改ざんなどの不正行為
- 復讐目的の破壊行為:解雇や待遇への不満から、システムを破壊したり、データを削除する
無意識の内部脅威
内部者の過失や、外部の攻撃者によるなりすましなど、意図せずに発生するセキュリティインシデントを指します。
- 誤送信・誤操作:メールの誤送信による機密情報の漏洩、ファイルの誤削除など
- パスワード管理の不備:簡単なパスワードの使用や共有による不正アクセスのリスク増大
- マルウェア感染:悪意のある添付ファイルを開く、フィッシング詐欺に引っかかるなどでマルウェアに感染する
- アカウント乗っ取り:攻撃者にだまされて、内部者のアクセス情報が盗まれ、システムに不正アクセスされる
内部脅威がもたらすリスク
内部脅威は、以下のような深刻なリスクをもたらします。
情報漏えいによる信用失墜
企業の知的財産や顧客データが流出し、競争力の低下やブランドイメージの毀損、顧客の信頼喪失につながります。
不正行為による財務的損失
詐欺や横領などの不正行為により直接的な金銭的損失が発生するほか、業務停止や復旧費用の増大によって財務負担が増加します。
サイバー攻撃による業務停止
ランサムウェアの感染によってシステムが暗号化され、データ破損やシステム障害が発生すると、業務の継続が困難になります。
内部脅威への対策
内部脅威に対しては以下のような対策が必要です。

アクセス管理の強化
内部脅威を防ぐためには、適切なアクセス管理が不可欠です。
従業員ごとに必要最小限の権限を付与する「最小権限の原則(PoLP: Principle of Least Privilege)」を適用し、不要なアクセスを制限します。
また、多要素認証(MFA)の導入や、定期的なアクセス権の見直しを行うことで、不正アクセスのリスクを低減できます。
従業員のセキュリティ教育
内部脅威の多くは、従業員のセキュリティ意識の低さによって引き起こされます。
フィッシング詐欺やソーシャルエンジニアリングのリスクを理解し、適切に対処できるように、定期的なセキュリティ教育や演習を実施しましょう。
特に、機密データの取り扱いや、疑わしいメールやリンクへの対応について具体的な指導を行うことが重要です。
行動監視とログ管理
従業員のシステムやデータへのアクセス履歴を監視し、不審な行動を検出する仕組みを導入することが、内部脅威の早期発見につながります。
セキュリティ情報・イベント管理(SIEM)システムを活用し、異常なアクセスやデータの大量ダウンロードといった行動をリアルタイムで分析・対応する体制を整えましょう。
データ保護対策
データの暗号化、データ分類とアクセス制御の強化、データ流出防止(DLP)ツールの導入などを通じて、機密情報の不正利用を防ぎます。
特に、外部ストレージへのデータ持ち出しや、クラウドサービスの利用制限を適切に管理することで、内部からの情報漏洩リスクを軽減できます。
内部通報制度の導入
内部脅威の兆候を早期に発見し、迅速に対応するためには、従業員が匿名で不正行為を報告できる内部通報制度(ホットライン)の導入が効果的です。
通報者が不利益を受けないよう、適切な保護措置を講じるとともに、従業員が安心して利用できる環境を整えることが重要です。
セキュリティソリューションやサービスを活用した内部脅威対策
内部脅威のリスクを最小限に抑えるためには、技術的なセキュリティソリューション と 運用・管理の強化 の両面から対策を講じる必要があります。
ここでは、内部脅威を防ぐための主なセキュリティソリューションとサービスを紹介します。
1. アクセス管理と認証強化
IAM(Identity and Access Management)
ユーザーのアクセス権を管理し、最小権限の原則を適用できるので、不要な権限を制限し、不正アクセスや内部からのデータ漏洩を防ぎます。
MFA(多要素認証)
パスワードだけでなく、ワンタイムパスワード(OTP)や生体認証を組み合わせて認証を強化することで、なりすましやアカウントの不正使用を防止します。
2. ユーザー行動分析と異常検知
UEBA(User and Entity Behavior Analytics)
AIや機械学習を活用し、通常とは異なるユーザー行動をリアルタイムで検知するので、内部の不正行為や不審なアカウント利用を即座に察知できます。
SIEM(Security Information and Event Management)
ログデータを一元管理し、異常なアクティビティをリアルタイムで分析できるので、過去のログと照らし合わせ、内部脅威のパターンを可視化できます。
3. データ保護と情報漏洩対策
DLP(Data Loss Prevention)
データの送信・コピー・印刷などの操作を監視できるので、内部関係者による意図的・偶発的なデータ流出を防ぎます。
CASB(Cloud Access Security Broker)
クラウドサービス利用時のセキュリティ管理を強化できるので、従業員のクラウド利用を可視化し、不正なデータ持ち出しを防止します。
4. 内部脅威の監視と可視化
EDR(Endpoint Detection and Response)
エンドポイント(PC・サーバー)上の異常な挙動を検出して即座に対応できるため、内部からの攻撃者が端末を悪用した際に即座に検知・対応できます。
UBA(User Behavior Analytics)
ユーザーの行動を分析し、通常とは異なるアクセスや操作を特定するので、不審な動きを即座に察知し、内部不正を未然に防ぎます。
5. 内部脅威に強いアーキテクチャの導入
マイクロセグメンテーション
ネットワークを細かく分離・分割して、アクセス権限を最小限にすることで、内部者が権限のない場所にアクセスできないようにできます。
また、万が一内部脅威が起こっても、アクセスが制御されているため、他端末やサーバーなどに移動ができず、被害を最小限に抑えられます。
まとめ
内部脅威は、従業員や内部関係者の行動によって発生するため、技術と管理の両面からの対策が不可欠 です。
企業のセキュリティポリシーに合わせて適切なソリューションを導入し、定期的な教育と監視を行うことで、内部脅威リスクを最小限に抑えられます。
今こそ、企業のセキュリティ体制を見直し、信頼性の高い情報管理環境を構築しましょう。
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【参考サイト】
・独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)┃情報セキュリティ10大脅威 2024 解説書

この記事の著者:電巧社セキュリティブログ編集部
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