NGFWとマイクロセグメンテーションの違いとは?それぞれのサイバー攻撃への対策方法などを解説

NGFWとマイクロセグメンテーションの違いとは? それぞれのサイバー攻撃への対策方法などを解説 電巧社ブログ

サイバー攻撃の脅威が増大する中、企業は効果的なネットワークセキュリティを構築するためにさまざまなソリューションを検討する必要があります。

中でも次世代ファイアウォール(NGFW)とマイクロセグメンテーションは、現代の複雑なサイバー攻撃に対抗するための2つの主要なアプローチとして注目されています。

しかし、どちらの技術が自社の環境に適しているのか、導入時に検討すべきポイントは何かを理解することは、企業にとって重要な課題です。

本記事では、NGFWとマイクロセグメンテーションの違いや、それぞれのセキュリティ対策について詳しく解説し、最適なセキュリティソリューションの選び方を紹介します。

NGFW(次世代ファイアウォール)とは

次世代ファイアウォール(NGFW)は、従来のファイアウォールの機能を拡張し、現代のサイバー脅威に対応するために設計された高度なネットワークセキュリティ技術です。

NGFWは、従来のステートフルインスペクションに加え、アプリケーション認識、統合型侵入防止システム(IPS)、ディープパケットインスペクション(DPI)などの機能を備えています。

これにより、NGFWはアプリケーションレベルでのトラフィック制御や、高度なマルウェアの検出・ブロックが可能となり、より細かいセキュリティポリシーの適用が可能です。

また、クラウドベースの脅威インテリジェンスを活用し、最新の脅威に対する防御能力を継続的に更新することができます。

NGFWは、現代の複雑なネットワーク環境において、より効果的な境界防御を提供し、組織のセキュリティ態勢を強化する重要な役割を果たしています。

従来型のファイアウォールと違う点は?

従来型のファイアウォールとNGFW(次世代ファイアウォール)の主な違いは、検査能力と機能の範囲にあります。

従来型のファイアウォールは主にパケットフィルタリングとステートフルインスペクションに基づいて動作し、OSI参照モデルのネットワーク層とトランスポート層でトラフィックを制御します。

一方、NGFWはこれらの基本機能に加えて、以下の高度な機能を備えています。

  • アプリケーション認識と制御
    OSI参照モデルのアプリケーション層でトラフィックを検査し、特定のアプリケーションの使用を制御できます
  • 統合型侵入防止システム(IPS)
    高度な脅威を検出し、リアルタイムでブロックします
  • ディープパケットインスペクション(DPI)
    パケットの内容を詳細に検査し、マルウェアなどの脅威を特定します
  • クラウドベースの脅威インテリジェンス
    最新の脅威情報を常時更新し、新たな攻撃に迅速に対応します

これらの機能により、NGFWは従来型のファイアウォールよりも高度なセキュリティ対策を提供し、現代の複雑なサイバー脅威に対してより効果的に対応することができます。

NGFWでのサイバー攻撃対策方法

NGFWは、複数の高度な機能を組み合わせることで、現代のサイバー攻撃に対して多層的な防御を提供します。主な対策方法には以下が含まれます。

  • ディープパケットインスペクション (DPI)
    トラフィックの内容を詳細に検査し、悪意のあるペイロードを検出・ブロックします
  • アプリケーション認識
    特定のアプリケーションやプロトコルを識別し、きめ細かいポリシー制御を可能にします
  • 統合型侵入防止システム (IPS)
    既知の攻撃パターンや異常な動作を検出し、リアルタイムでブロックします
  • SSL/TLS復号化
    暗号化されたトラフィックを検査し、隠れた脅威を発見します
  • クラウドベースの脅威インテリジェンス
    最新の脅威情報を常時更新し、新たな攻撃に迅速に対応します

これらの機能により、NGFWは従来のファイアウォールよりも効果的にサイバー攻撃を防御し、組織のセキュリティ態勢を強化します。

マイクロセグメンテーションとは

マイクロセグメンテーションは、エンドポイントを細かく分割して保護し、各セグメント間のトラフィックを厳密に制御するセキュリティ技術です。

この手法では、ワークロード、アプリケーション、またはデータの特性に基づいて、ネットワークを論理的に分割します。

従来のネットワークセグメンテーションがIPアドレスやサブネットに基づいていたのに対し、マイクロセグメンテーションは様々な条件のセキュリティポリシーを定義できます。

これにより、攻撃者のラテラルムーブメント(横方向への移動)を制限し、マルウェアの拡散やデータ侵害のリスクを大幅に低減させることができます。

マイクロセグメンテーションは、ゼロトラストアーキテクチャの重要な構成要素であり、クラウド環境やコンテナ化されたアプリケーションなど、動的に変化するモダンなIT環境に適したセキュリティソリューションとして注目されています。

マイクロセグメンテーションでのサイバー攻撃対策方法

マイクロセグメンテーションは、以下の方法でサイバー攻撃に対抗します。

  • ラテラルムーブメントの制限
    ネットワークを細かく分割し、セグメント間の通信を厳密に制御することで、攻撃者の横方向への移動を防ぎます
  • 最小権限の原則
    各セグメントに必要最小限のアクセス権限のみを付与し、不要な通信を遮断します
  • リアルタイムの可視性
    ネットワーク内のトラフィックを常時監視し、異常な動きを迅速に検知します
  • 動的なポリシー適用
    クラウドや仮想環境の変化に応じて、自動的にセキュリティポリシーを更新します
  • アイデンティティベースの制御
    IPアドレスだけでなく、ユーザーやアプリケーションの属性に基づいてアクセスを制御します

これらの手法により、マイクロセグメンテーションは従来の境界防御を超えた、きめ細かいセキュリティ対策を実現し、現代の複雑なIT環境におけるサイバー脅威に効果的に対応します。

NGFWとマイクロセグメンテーションの選び方:企業が導入時に考慮すべき6つのポイント

NGFWとマイクロセグメンテーションの特徴などの違いを簡単にまとめると、以下のようになります。

比較項目NGFWマイクロセグメンテーション
主な目的ネットワーク境界でのトラフィック検査とアクセス制御内部ネットワークでのアタックサーフェスの縮小
運用範囲ネットワーク境界、データセンター、クラウド主に内部ネットワーク
主な機能アプリケーション制御、IDS/IPS機能、トラフィックの可視化エンドポイントの細分化、通信制御
セキュリティ
アプローチ
境界ベースのセキュリティポリシー適用攻撃拡散防止のためのワークロードベースのポリシー適用
トラフィック制御パケットレベルでのトラフィック検査と制御通信レベルでのセグメント間のトラフィック制御
柔軟性ある程度の柔軟性はあるが、境界ベースでの運用が主高い柔軟性で、きめ細かく分けて制御可能

では、企業はそれぞれの導入を検討する際に、どういったことに着目すればいいのでしょうか。

導入には以下の6つのポイントを考慮する必要があります。

1.セキュリティ要件の明確化

まず、企業のセキュリティ要件を正確に把握することが必要です。

もし、主な課題がネットワーク境界を保護し、外部からの侵入を防ぐことであれば、NGFWが有効です。

NGFWは、外部からの攻撃を検出し、アプリケーションレベルでの制御を提供します。

一方、内部ネットワークでの攻撃拡散や横方向の移動(ラテラルムーブメント)を防ぐことが重要な場合、マイクロセグメンテーションが最適です。

マイクロセグメンテーションは、内部ネットワークの個々のワークロードを分割し、アタックサーフェスを縮小することに優れています。

2.ネットワーク構成の複雑さ

ネットワークの複雑さに応じて、どちらを選ぶべきかが変わります。

企業がシンプルなネットワーク構成を持つ場合、NGFWの導入が比較的容易であり、外部脅威を防ぐ上で効果的です。

しかし、クラウド環境や複数のデータセンター、リモートワークが含まれる複雑なネットワーク構成の場合は、マイクロセグメンテーションのように内部トラフィックを細かく制御できるソリューションが必要です。

マイクロセグメンテーションは、複雑なネットワーク構造に適応し、セキュリティポリシーを動的に適用することができます。

3.スケーラビリティと柔軟性

企業の成長やネットワークの拡張を見据えたスケーラビリティと柔軟性も重要なポイントです。

NGFWは、基本的に境界セキュリティに重点を置いているため、ネットワークが拡大する際に、ネットワーク境界での処理負荷が増加します。

一方、マイクロセグメンテーションは、ワークロード単位でのセキュリティを提供するため、ネットワークの規模にかかわらず柔軟に対応できるスケーラビリティを持っています。

動的な環境下でも、ポリシーを自動的に適用できるため、拡張性が高いのが特徴です。

4.運用負荷とコスト

SASEは通常サブスクリプション形式で提供されるため、初期投資を抑えられることが多いです。

導入および運用にかかる負荷とコストも選択の大きな要因となります。

NGFWは、ネットワーク境界に集中した保護を提供するため、運用管理が比較的シンプルで、初期導入コストも予測しやすいです。

しかし、ネットワーク全体の内部脅威に対する防御は別途対策が必要になることがあり、そのために追加コストが発生する可能性があります。

一方、マイクロセグメンテーションは、初期導入には専門知識が必要であり、設計や設定に手間がかかる場合がありますが、運用が自動化されることで長期的には運用コストが抑えられることが期待されます。

5.コンプライアンス要件

業界や地域ごとの法令や規制に従う必要がある場合、どちらのソリューションが適しているかを評価する必要があります。

NGFWは、基本的なセキュリティコンプライアンス要件に対応するため、境界でのトラフィック制御に役立ちます。

しかし、データ保護やプライバシーに関する厳格な要件を満たす必要がある場合、マイクロセグメンテーションが有利です。

マイクロセグメンテーションでは、内部ネットワークのセグメントごとにポリシーを細かく設定でき、データの安全性を高めることができます。

6.既存インフラストラクチャとの統合

企業の既存のインフラやセキュリティシステムとの統合も重要な考慮点です。

NGFWは、従来のファイアウォールと互換性があり、既存のネットワークインフラに比較的簡単に統合できます。

一方、マイクロセグメンテーションは、より内部に焦点を当てており、仮想環境やクラウド環境での統合に強みがあります。

特に、クラウドネイティブなインフラストラクチャを持つ企業や、ゼロトラストアーキテクチャを導入している企業にとっては、マイクロセグメンテーションが効果的な選択肢となります。

これらのポイントを慎重に評価することで、企業は自社の環境に最適なセキュリティソリューションを選択し、効果的なサイバー攻撃対策を実現できます。

まとめ

NGFWは、ネットワーク境界での防御に優れ、外部からの侵入を防ぐための強力なツールです。

一方で、マイクロセグメンテーションは、内部ネットワークの細かな分割とトラフィックの制御を通じて、攻撃者の横方向の移動を制限し、セキュリティを強化します。

企業は、自社のセキュリティ要件、ネットワークの複雑さ、将来的なスケーラビリティを考慮しながら、最適なソリューションを選択することが重要です。

Denkosha

この記事の著者:電巧社セキュリティブログ編集部

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