近年、地球温暖化の進行に伴い、企業が環境問題に取り組む必要性が高まっています。
特に中小企業は、環境に対する責任を果たしながら、持続可能な経営を実現するための「脱炭素経営」が求められています。
その一環として、カーボンフットプリント(CFP)の測定と削減が企業にとって非常に重要となってきます。
本記事では、カーボンフットプリントの基本から、測定方法、そして具体的な削減策までを詳しく解説します。
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カーボンフットプリントとは?
カーボンフットプリント(Carbon Footprint of Products:略してCFP)とは、製品やサービスのライフサイクル全体(原材料調達から廃棄・リサイクルまで)を通して排出される温室効果ガス(GHG)の総量をCO2排出量に換算して数値化したものです。
これには、燃料の使用やエネルギー消費、製品の製造・廃棄に至るまでの過程が含まれます。
企業のカーボンフットプリントは、温室効果ガスの排出元を表すScope(スコープ)というもので分類されます:
Scope | 定義 | 具体例 |
---|---|---|
Scope 1 | 自社での直接排出 | 自社の工場・オフィスでの燃料燃焼 |
Scope 2 | 他社からの間接排出 | 購入した電力など、エネルギーの使用 |
Scope 3 | その他の間接排出 | 原材料調達、製品使用、廃棄など |
Scopeのすべての範囲を測定・管理することで、総合的な排出量の削減が可能となります。
カーボンフットプリントにおける海外の取り組み
欧州や北米では、企業や政府が積極的にカーボンフットプリント削減に取り組んでいます。
例えば、EUの「Fit for 55」やアメリカのクリーンエネルギープランなどは、2050年までにカーボンニュートラルを目指しています。
これらの政策に基づき、多くの企業が再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率化の取り組みを進めています。
国際的な企業事例としては、MicrosoftやIKEAなどが自社のカーボンフットプリント削減目標を公表し、脱炭素経営において大きな成果を上げています。
Microsoftは2030年までにカーボンネガティブを達成し、2050年までに創業以来の全ての排出量を相殺する目標を掲げています。
カーボンフットプリント削減に向けて、同社はScope1、2、3の全ての排出量を対象に2030年までに50%以上の削減を目指すとともに、内部炭素税をサプライチェーン全体に拡大適用しています。
Microsoftでは、このカーボンフットプリント削減の取り組みを「ムーンショット」と表現し、世界全体で取り組むべき課題だとしています。
カーボンフットプリントにおける日本の取り組み
日本でも「2050年カーボンニュートラル」の目標が掲げられており、様々な企業がカーボンフットプリントの算出を行って、排出量削減に取り組んでいます。
例えば、ミニストップ株式会社は2024年3月18日、環境省のモデル事業に参加し「ソフトクリームバニラ(食べるスプーン付)」のカーボンフットプリント(CFP)を算定したことを発表しました。
算定結果は0.2479kgCO2eqとなり、2023年6月から全店で導入した食べるスプーンにより、年間約44tのプラスチック削減と約121.88t-CO2の排出抑制を実現しています。
今後は流通段階やサプライチェーン全体でのCO2削減に取り組むとともに、ソフトクリームを通じた社会課題解決として花の輪運動の継続や環境配慮型商品の開発を進めていく方針です。
そして政府や自治体では、中小企業を支援するためのさまざまなプログラムを展開しています。
例えば、グリーン成長戦略や補助金制度を活用することで、中小企業でも持続可能なビジネスモデルを構築することが可能です。
カーボンフットプリントの測定方法
カーボンフットプリントを正確に測定することは、削減計画を立てる上での第一歩です。
以下の手順に従って、カーボンフットプリントを測定します:
➊ エネルギーコストの削減 算定方針の検討
測定の目的や対象範囲を明確にし、どのような基準や方法を用いるかを決定します。
その際、ライフサイクルアセスメント(LCA)を活用することで、製品やサービスのライフサイクル全体での排出量を総合的に評価できます。
➋ 算定範囲の設定
Scope 1(直接排出)、Scope 2(間接排出)、Scope 3(その他の間接排出)を含めた排出源を特定します。
➌ データ収集
エネルギー使用量や原材料の消費量など、必要なデータを収集します。データの信頼性と一貫性が重要です。
➍ 排出量の計算
GHGプロトコルなどの基準に基づいて、収集したデータから排出量を計算します。
➎ 結果の検証と報告
計算結果を検証し、必要に応じて第三者によるレビューを受けます。その後、結果を報告書としてまとめます。
これらのステップは、カーボンフットプリント測定の全体像を理解するために重要です。
カーボンフットプリント削減策の具体例
中小企業がカーボンフットプリントを削減するために、手軽に取り組める施策として、まず省エネ対策が挙げられます。具体的には、以下のような対策があります:
- 照明のLED化
- 省エネ型設備の導入
- スマートメーターの設置による無駄なエネルギー消費の防止
- 断熱性能の向上
- エネルギー管理システム(BEMS)の導入
また、再生可能エネルギーの導入も有力な削減策です。例えば、太陽光発電システムを利用することで、自社で使用するエネルギーをクリーンエネルギーに置き換えることができます。
さらに、グリーン電力証書の購入や再生可能エネルギー由来の電力プランへの切り替えなども効果的です。
カーボンフットプリントの削減によるメリットと課題
メリット
カーボンフットプリントを削減することにより、企業は以下のようなメリットを享受できます:
- コスト削減:エネルギー効率の向上によるランニングコストの低減
- ブランド価値の向上:環境に配慮した企業としてのイメージアップ
- 新規顧客の獲得:環境意識の高い消費者からの支持
- リスク管理:将来的な環境規制への対応
- イノベーションの促進:新技術や新製品の開発機会
課題
一方で、カーボンフットプリント削減には以下のような課題もあります:
- 初期投資の負担:省エネ設備や再生可能エネルギー導入のコスト
- 専門知識の必要性:正確な測定と効果的な削減策の立案には専門性が求められる
- 長期的な取り組みの必要性:即効性のある結果が得られにくい
- サプライチェーン全体の協力:Scope 3の削減には取引先の協力が不可欠
これらの課題に対しては、政府の支援制度の活用や、段階的な取り組み、社内教育の充実などが解決策として考えられます。
まとめ
カーボンフットプリントは、企業の環境への影響を数値化するための重要な指標です。
正確に測定し、Scope 1、2、3の排出源を特定することで、省エネ対策や再生可能エネルギーの導入など、具体的な削減策を実施でき、コスト削減やブランド価値の向上といったメリットを受けることができます。
課題はありますが、政府の支援制度を活用しながら、段階的な取り組みを進めていくことが、中小企業にとってのカーボンフットプリント削減の成功の鍵となります。
【参考サイト】
・経済産業省 ┃カーボンフットプリント ガイドライン
・環境省┃サプライチェーン排出量算定の考え方
・The Official Microsoft Blog┃Microsoft will be carbon negative by 2030
・ミニストップ株式会社┃ソフトクリームでカーボンフットプリントを算定 食べるスプーンでCO2を削減 ミニストップは、ソフトクリームで社会課題の解決につなげます など
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