エネルギーの見直しが進む中、地球環境に優しい選択肢として注目されているのが「LNG(液化天然ガス)」です。
脱炭素社会を目指す企業にとって、LNGは省エネやコスト削減といった多くの可能性を秘めています。
本記事では、LNGの基本情報から環境面でのメリット、具体的な使用用途までを網羅的に解説し、脱炭素経営を目指す企業にとってのLNGの価値と実用性を探ります。
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LNGとは
LNG(Liquefied Natural Gas、液化天然ガス)は、天然ガスを約-162℃まで冷却して液化したものです。
主成分はメタン(CH4)で、その他にエタン、プロパン、ブタンなどの炭化水素も含まれています。
そして、以下のようなプロセスで液化することで体積を約600分の1に圧縮でき、効率的な輸送と貯蔵が可能になります。
またLNGは、主に4つの特徴を持っています。
➊ 無色透明で無臭
LNGは加工過程で不純物が取り除かれ、無色透明で無臭になります。
そのため、ガス漏れの際に異臭などで検知することが難しく、慎重な取り扱いが求められます。
➋ 水よりも軽い
LNGの比重は約0.42と、水よりもはるかに軽い液体です。
この特性により、水上での輸送や事故時に拡散しやすいというメリットもありますが、取り扱い時には専用の設備が必要です。
➌引火点が低く可燃性が高い
LNGは低い引火点を持つため、火気への注意が重要です。
燃焼時に硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)の排出量が少ないため、クリーンなエネルギー源として注目されています。
➍ 気化すると体積が約600倍に膨張
LNGは気化時に体積が約600倍に膨らむため、少量で多くのエネルギーを効率よく運搬できます。
これにより、貯蔵や輸送の効率が向上し、広いエリアでのエネルギー供給が可能です。
これらの特性から、LNGはさまざまな分野で利用され、環境に配慮したエネルギーとしても高い評価を得ています。
LPGとの違い
LNGと同じガス燃料で、LPG(液化石油ガス)があります。
LPGは主にプロパンとブタンから成り、比較的高い温度(プロパンで約-42℃)で液化できるため、取り扱いが容易です。
エネルギー密度が高く、家庭用ガスや自動車燃料など、小規模から中規模の用途に広く使用されています。
ここでは、両者の違いについて解説していきます。
特性 | LNG | LPG |
---|---|---|
主成分 | メタン(CH4) | プロパン(C3H8)、ブタン(C4H10) |
液化温度 | -162℃ | -42℃(プロパン) |
エネルギー密度 | 約40 MJ/㎥ | 約95 MJ/㎥ |
用途 | 発電、産業用ボイラー | 家庭用、輸送燃料 |
燃焼効率 | 高い | 高い |
使用用途
両者とも高い燃焼効率を持ちますが、用途によって適性が異なります。
LNGは大規模な利用に適しており、主に発電所や大型産業施設で使用されていますが、LPGは家庭用や小規模産業用として広く普及しています。
環境への影響
LNGはLPGと比較してCO2排出量がやや少なく、より環境に優しいとされています。
しかし、両者とも他の化石燃料(石炭や重油)と比べると、はるかにクリーンなエネルギー源です。
貯蔵と輸送
LNGは極低温を維持する必要があるため、特殊な設備や輸送手段が必要です。
一方、LPGは常温でも液体状態を保てるため、貯蔵や輸送が比較的容易です。
これらの特性の違いにより、LNGとLPGはそれぞれ異なる用途や規模の需要に対応しています。
企業がどちらを選択するかは、エネルギー需要の規模、用途、既存のインフラ、環境への配慮などを総合的に考慮して決定する必要があります。
LNGのメリット・デメリット
LNGには環境に配慮できるメリットがありますが、いくつかのデメリットや課題も存在します。
メリット
環境にやさしいクリーンエネルギー
LNGは、石炭や石油と比べて二酸化炭素(CO₂)や硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)の排出量が少なく、燃焼時に有害物質が発生しにくいため、大気汚染の削減に貢献します。
また、燃焼後の灰もほとんど発生しないため、廃棄物管理の負担も軽減されます。
安定した供給と経済性
LNGは、液化することで体積が大幅に減少し、輸送や貯蔵が容易になります。
このため、産油国に依存しがちなエネルギー供給網を多様化させ、安定した供給が可能です。
また、近年の技術進歩により、コストが削減され、他のエネルギー源と比較しても経済的に利用できるようになっています。
高いエネルギー効率
LNGは、同じ量であれば他の化石燃料よりもエネルギー効率が高く、少ない燃料でより多くのエネルギーを得られるのが特徴です。
このため、産業用だけでなく、発電所や家庭用燃料としても効率的に利用でき、エネルギー消費の最適化に寄与します。
LNGは、環境負荷の低減と安定供給を両立したエネルギー資源として、多くの企業が選択する価値があるといえるでしょう。
デメリット
温室効果ガスの排出のリスク
LNGは燃焼時の二酸化炭素(CO₂)排出量が石炭や石油よりも少ないものの、完全にゼロにはなりません。
また、LNGの主成分であるメタンは、採掘や輸送の過程で大気中に漏れ出す可能性があり、CO₂の25倍の温室効果を持つため、気候変動への影響が懸念されています。
輸送・貯蔵のコストと技術的課題
LNGはマイナス160度の低温で液化するため、輸送や貯蔵には特別な冷却技術が必要です。このため、初期の設備投資が高くなり、維持費もかさむことが課題です。
また、液体状態を保つための冷却技術が途切れると、再気化して漏出のリスクもあるため、管理が重要です。
価格変動のリスク
LNGは輸入に依存することが多く、供給元の国際情勢や地政学リスクによって価格が変動しやすいという欠点があります。
特に、LNGの主要輸出国での紛争や政策の変更は、輸入価格や供給の不安定さを招く可能性があります。
インフラの整備が必要
LNGを利用するには、専用の輸送船や貯蔵タンク、再ガス化施設といったインフラが必要です。
これらの整備には時間とコストがかかり、新興国や地方都市では導入が難しい場合もあります。
また、インフラが整っていない地域でLNGの利用を拡大するには、追加の投資が不可欠です。
LNGはクリーンエネルギーの一部として期待されていますが、これらのデメリットも考慮した上で、バランスの取れたエネルギー選択が求められます。
新たな選択肢:カーボンニュートラルLNG
LNGには、より環境負荷を抑えた「カーボンニュートラルLNG」というものがあります。
これは、LNGの生産から輸送、消費に至るまでの全過程で排出される温室効果ガスを、植林やクリーンエネルギープロジェクトへの投資などで相殺するカーボンオフセットを活用した製品です。
主なメリット
- さらなる環境負荷の低減: 通常のLNGよりもCO2排出量を実質的にゼロに近づけることができます。企業のカーボンニュートラル目標達成に大きく貢献します。
- ブランドイメージの向上: 環境に配慮した企業としての評価を高めることができます。ESG投資の観点からも注目を集めやすくなります。
- 規制対応: 将来的な環境規制の強化に先行して対応できます。
ただ、現状では供給量が限られているため、通常のLNGよりもコストが高くなる傾向があります。
今後の需要増加に伴い、供給も拡大すると予想されていますので、長期的な環境戦略の一環として検討する価値はあります。
まとめ
LNGは、環境に優しいクリーンエネルギーとして、企業が持続可能な成長を目指す上で大いに役立つエネルギー源です。
メリットとデメリットをしっかり理解し、適切に活用することで、エネルギーの効率化や環境負荷の低減を実現できます。
今後のエネルギー戦略として、LNGの導入を検討することが、企業にとって重要な一歩となるでしょう。
【参考サイト】
・独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構┃知っておきたい天然ガスの基礎知識。~LNG、パイプライン、水素製造…… 天然ガスの利用可能性~
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