オフィスの電力消費量の内訳をご存じでしょうか。
オフィスビルでは、9時から19時頃に高い電力消費が続く傾向にあります。その消費電力のうち、約49%がエアコンなどの空調が占めています。
またオフィスに限らず、空調は多くの電力を消費します。
そのため、空調の省エネ対策に取り組んでいるか否かで、コスト面やCO2排出量に大きく差が出る、と言えるのです。
最も効果的な省エネ対策として、最新の高効率機器への更新が挙げられますが、多額のコストと時間を必要とします。
その他の対策もやり尽くしているケースが多く、スピーディーな省エネ実現の方法に悩んでいる方も。
今回は、工事不要かつ低コストで、消費電力をグッと抑えられる革新的な省エネ対策をご紹介します。
.空調の熱交換率は“静電気”で低下?
快適な環境を保つために欠かせないエアコン。
実は、静電気によって熱交換率が低下しているのです。
そして、熱交換率の低下は、電力を約20%も余分に消費させてしまいます。
なぜ、静電気が電力消費に影響するのでしょうか。
実際にどのような影響を及ぼしているのか、トヨタ自動車の例を用いて説明していきましょう。
.トヨタ自動車の『除電スタビライジングプラスシート』
車は走行中、空気との摩擦でボディの各部にプラスの静電気が発生、帯電します。
発生した静電気は、ステアリング(ハンドルなどの操舵装置)を通し、ドライバーへと伝わって滞留。
そして、またボディへ静電気が帯電していきます。
では、ボディが静電気を帯びていると、何が起こるのでしょうか。
プラスの静電気を帯電した《空気》と《車のボディ》は反発しあい、ボディ周りに流れる空気に乱れが発生します。
空気の流れが乱れると、ボディがブレやすくなり、乗り心地や操縦に影響するのです。
そこで開発されたのが『除電スタビライジングプラスシート』。
「除電機能付表皮(導電性表皮材)」をシートの一部に使うことで、ドライバーを通してボディの特定箇所に溜まっていた静電気を分散できるように。
このシートによってボディの帯電量は軽減し、空気の流れがスムーズになりました。
空気とボディの反発が軽減されたことで、なめらかな走行を可能にし、快適な乗り心地、操縦安定性アップを実現しています。
このシートは2021年の「カローラ特別仕様車」を皮切りに、2022年の「新型クラウン」、2023年の「新型プリウス」にも採用されています。
つまり、車の走行をも変化させる静電気が反発する力・影響はとても大きく、様々なところで悪影響を及ぼしていると言えます。
次に紹介するエアコンの例も同様です。
.静電気発生を抑えて省エネ実現
エアコン内部の熱交換機・樹脂製パネルも、空気との摩擦によってプラスの静電気が発生します。
室内の空気を吸い込んで熱交換を行うエアコンは、静電気の反発による空気の乱れで熱交換率が下がり、ムダな電力消費が発生しているのです。
しかし裏を返せば、静電気発生を抑え、内部の空気の循環を良くするだけで、省エネを実現できます。
エアコンは、除電スタビライジングプラスシートとは違い、《静電気を分散》させるのではなく、《静電気の発生を抑える》ことで、空気の流れをスムーズにしましょう。
例えば、エアコンがプラスの静電気を帯びた空気を内部へと吸い込む際、マイナス電位を帯びているシートを通すことができれば、静電気そのものの発生を抑えられます。
すると静電気による空気のエアコンの反発がなくなり、効率よく熱交換が行なえるのです。
その場合は、以下のようなフローで省エネが実現します。
① 静電気の発生を抑えると、エアコン内部の空気の流れが良くなる
② 空気の流れがスムーズになると、熱交換率がよくなる
③ 熱交換率が良くなることで、設定温度への到達が早まり、室温をキープできる
④ コンプレッサー(※)の休む時間が多くなり、省エネにつながる
また、空気自体も静電気を帯びクラスター化(塊)しています。
そのクラスター化した空気は、マイナス電位を帯びているシートに何度も循環させることで、無電荷状態になり微粒化します。
そうすると熱交換効率が上がり、空気が室内を効率よく対流。
さらなる省エネ効果が期待できます。
※コンプレッサー とは
エアコン内部の冷媒ガスを圧縮し、気体の温度を変化させる機械。エアコンの90%の電力を消費していると言われている。
.まとめ
私たちの身近な自然現象の一つである静電気。
その静電気の発生・反発が、エアコンや車に影響を与えていることに、驚いた方もいるのではないでしょうか。
再生可能エネルギー設備の導入は、時間とコストがかかってしまうのが難点。
まずは簡単に取り組める省エネ対策を視野にいれ、取り組んでみるのはいかがでしょうか。
空調の省エネ対策に悩んでいる方は、ぜひエアコンの静電気対策を検討してみてください。
今や技術が進歩し、設置するだけ・交換するだけという、《手間をかけずとも省エネが実現》できる商品も存在しています。
自社のエネルギー消費割合を確認し、どの分野を省エネすべきかを分析、判断した上で、最適な商品・サービスを選択すると良いでしょう。
ちょっとした工夫でできる省エネ対策で、脱炭素経営への一歩を踏み出してみませんか。
【参考サイト】
「導電性表皮材」を新型プリウスに供給 | 2023年のニュースリリース | ニュース | アキレス [Achilles]│2023.2.15
経済産業省 資源エネルギー庁|夏季の省エネ・節電メニュー(事業者)本州・四国・九州|2023.06