2023年6月12日

小規模神社を救え!故郷を救え!
~ご縁がなくなる5円玉~

line
DEレポート14

SDGsが声高に唱えられる中、日本には1000年以上続く神社が数多あり、その持続性において世界的にも注目されている。中でも20年毎に行われる伊勢神宮の式年遷宮は有名で、何故20年毎なのか?理由は不明だが、結果として新明造りの建築技術や、御装束神宝などの調度品を現在に伝える事が出来ている。

更に将来の遷宮を見越し、神宮林と呼ばれる森に200年掛かりで目標の檜が育成出来るよう大正時代から取り組んでいたりもする。 まだまだスケールの大きい取り組みはあるが、伊勢神宮以外でも大規模で人が集まる神社はこれからも持続して行くと思われる。

しかしながら、全国に8万社あると言われる神社の殆どは宮司が常駐していないような小規模な神社であり、その維持管理の実態を調べてみた。

【図解付きレポート】無料ダウンロードはこちらから

1.そもそも神社ってなに?

  • 古代日本人は、大木や巨岩、滝、山などに神が宿ると考え、それらの周辺は神聖なる場所とされ、やがてそこに祭場を設け、さらに風雨を凌ぐためといった理由などから建物が設けられ、それが今日の神社の形態に繋がっている
  • 集落や区域ごとに建てられた神社は祭りや行事に重要な役割を果たすようになったが、最近は少子高齢化、氏子の減少、地域コミュニティの崩壊に加え、人々の信仰心の低下で寄付が集まらなくなっている
  • 伊勢神宮でさえ、式年遷宮にかかる遷宮費用550億円のうち、220億円は寄付で賄われている

寄付が生命線=地域課題+信仰心の大幅低下

2.神社の収入はどこから?

  • 神社の主な収入源は①参拝者の為の祈願、祈禱 ②お札、お守り等の授与品 ③氏子、崇敬者からの寄付金 ④お賽銭とあるが、小規模神社で①は期待出来ず、②も殆ど期待出来そうにない。③④を期待したいところだが、氏子そのものが減少しており、神社の収入は目減りする一方である
  • アンケートによると、神社の収入で100万円未満と回答したのは28.24%で、300万円未満は全体の61.18%にあたる
  • しかもこのアンケートは神社本庁が行った1万310人を対象にしたアンケートで、回答率60.1%、未回答が40%近くであった。この40%の未回答者は神社活動にあまり積極的でない事が想定される為、300万円未満の収入として換算すると、実に8割が300万円未満の収入という事になる。ここから維持管理費を捻出しなくてはならない

民間企業で言えば倒産状態がほとんど

3.収入の少なさの原因は?

  • 原因としては少子高齢化による人口減少(氏子の減少)、過疎化による地域コミュニティの崩壊、宮司(会社で言えば社長)の減少等がある
  • 宮司に至っては全国8万社の神社に対し、1万人しかいない為、宮司を兼務して対応にあたっている
  • 氏子の減少→神社収入の低下→宮司の収入低下→宮司の成り手不足→宮司の兼務化→神社維持管理の質の低下→神社収入の低下という負のスパイラルに陥っている
  • 地方では兼務宮司すらいない不活動神社が増えている
  • 調べて意外だったが、明治23年は19万3242社、明治43年は13万7134社に対し、神職(会社でいえば社員)数は1万5000人であったが、現在の神職数は2万1700人で推移しているので、増えている側面もある

負のスパイラルは氏子の減少だけでなく、宮司の行動も必須

4.国が補助を出せば良いんじゃないの?

  • 神社を修復するにあたり、必要になってくるのは資金をどうするか?になってくるが、神社は宗教法人にあたる為、政教分離の原則上、文化財指定や登録を受けていない神社は優遇を受けられない
  • NPO法人で補助金を活用する事も出来るが、特定神社への補助金で、包括的な取り組みになっているとは言い難い

短絡的な対策では何の解決にもならない、根本的な解決策は別にある

5.成功例はある?

  • 新潟県中越沖地震では被災した神社に対し、「地域コミュニティ施設等再建支援事業」を利用した。これは宗教的施設の復旧という名目ではなく、「地域コミュニティ」の施設であるという建前の支援である
  • 大阪にある宮大工会社の合同会社金田社寺建築は、宮大工養成塾を開き、宮大工になりたい塾生から学費を徴収し、学費の一部を神社仏閣の修復財源に充て、実践の機会を提供するというWin-Winの仕組みを作った
  • この取り組みは日頃職人不足、後継者不足に悩まされている日本の工芸職人たちの「持続性」にとても参考になる取り組みだと思う

能動的な行動による成功事例も多々ある

6.個人で出来る事はある?

  • お参りする時に入れるお賽銭に5円玉を使う人は多い
  • これはご縁がありますように。とか硬貨に穴が空いていて見通しが良い等の理由でお賽銭として好まれる。逆に500円硬貨はこれ以上の効果が無いとの理由で敬遠されると聞く
  • 5円硬貨は1870年(明治3年)に発行され、穴が空いている5円硬貨は1949年(昭和24年)に発行された
  • 1950年の高卒男子初任給が3500円に対し、令和4年高卒初任給は18万3400円にまで増え、52.4倍となった
  • あくまでも目安だが、5円×52.4倍=262円はお賽銭に入れたい所である

262円/回は決して高いハードルではない

他に何か解決策はある?

  • 沖縄県石垣市が返礼品ナシのふるさと納税で尖閣諸島寄付金を募り、1ヶ月間で5000万円集まったと話題になった事がある
  • これに倣い、前述したように神社の再建という名目ではなく、コミュニティ施設の再建という名目でふるさと納税を募り、PRすれば、ある程度の財源は確保出来ると思う

方法論の多様化~先祖のいる自治体へのふるさと納税~

最後に

普段神社に行かない人も、初詣のお参り等でお賽銭箱を前にした時、「いくら入れれば良いんだろう?5円?50円?100円?」と気になり心配される方もいるだろうが、そう思ってしまう事こそが、“神様の失礼にあたりたくない”という心の現れに違いない。

日本人にとって神様はあまりにも身近で、身近故に信仰している事さえ気付かずに過ごしてしまっている。小規模神社はこれからも無くなりそうで無くならない、まさに神様のご加護(実情は厳しいながらも影で誰かが存続の努力をしてくれている)で地域に溶け込んで存在している事に日々感謝の気持ちを心掛けたい。

【図解付きレポート】無料ダウンロードはこちらから

DEレポートNo.14 内容