気候変動対策やカーボンニュートラルの実現に向け、企業の脱炭素経営が求められる中、再生可能エネルギーの活用が重要視されています。
地熱発電は、その中でも天候に左右されない安定したエネルギー供給が可能な技術ですが、従来型の地熱発電には立地制約や環境リスク、高コストといった課題がありました。
こうした課題を解決する新たな技術として注目されているのが「クローズドループ」です。
本記事では、クローズドループ方式の仕組みや従来の地熱発電との違い、メリットや海外での事例などを解説します。
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従来の地熱発電とは? 仕組みと課題
地熱発電の仕組み
地熱発電は、地下のマグマ熱を利用して水を蒸気に変え、その蒸気でタービンを回して発電します。
主な方式として以下の2つがあります:
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フラッシュ方式:
- 地下の高温高圧の熱水を地上に引き上げ、圧力を下げて蒸気を発生させ、その蒸気でタービンを回す方式
- 高温の地熱資源が必要
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バイナリー方式:
- 地熱で熱交換媒体(例:イソブタン)を加熱し、その蒸気でタービンを回す方式
- 比較的低温の地熱資源でも利用可能
従来の地熱発電の課題
従来の地熱発電には以下の課題があります:
- 立地制約:適切な地熱資源が存在する地域でしか発電が難しい。日本では国立公園や温泉などが該当するため、周辺地域との調整が不可欠
- 環境影響:地熱井の掘削により、地盤沈下や温泉資源の枯渇リスクがある
- 高コストと長期間:開発には10~15年の多大な時間と初期投資が必要
これらの課題を解決する新しいアプローチとして、クローズドループが注目されています。
クローズドループ(高温岩体地熱発電)とは?
クローズドループは、地下に密閉されたパイプシステム(ループ)を設置し、その中で水などの作動流体を循環させて地中の熱を回収し、地上で発電する方式です。

このシステムは外部と遮断されているため、地下資源を直接採取せず、環境への影響を最小限に抑えることができます。
クローズドループのメリット
クローズドループには以下のメリットがあります:
- 立地制約の緩和:温水や蒸気などの特定の地熱資源に依存しないため、より多くの地域での導入が可能。
- 環境負荷の低減:地下資源を直接採取しないため、地盤沈下や温泉資源の枯渇リスクが低い。
- システムの長寿命化:密閉されたシステムにより、腐食や詰まりのリスクが低減。
- 持続可能な発電:熱源を枯渇させることなく、安定した発電が可能。
これらの特性により、クローズドループは企業の脱炭素経営や省エネ対策において有望な選択肢となります。
クローズドループの海外事例と日本の動向
海外での導入事例
カナダのEavor Technologies社が開発した「Eavor-Loop」は、クローズドループの代表例です。
同社は、カナダのアルバータ州で試験施設「Eavor-Lite」を建設し、クローズドループ技術の有効性を検証しました。
また、ドイツでは2023年にEavor Technologies社がクローズドループを導入するプロジェクトを進めており、今後の大規模展開が期待されています。
この技術は、既存の地熱発電に依存しない新たなエネルギーソリューションとして、世界的に注目を集めています。
日本国内の動向
日本国内では、地熱発電に適した場所も多いため、環境省や経済産業省が地熱発電の拡大を推進しており、クローズドループ方式をはじめとする新たな地熱技術への技術支援の準備を進めています。
まとめ
クローズドループ方式の地熱発電は、地下資源を直接採取せずに発電することで、環境への影響を最小限に抑えつつ、より多くの地域での導入が可能な技術として期待されています。
カナダやドイツなど海外ではすでに実証実験が進んでおり、日本国内でも環境省や経済産業省が技術支援の準備を進めています。
現状一般導入は難しい技術ではありますが、カーボンニュートラルに向けた新たな再生可能エネルギーの動向に注目していきましょう。
【参考サイト】
・資源エネルギー庁┃地熱発電の開発促進に向けて
・エバーテクノロジー┃クローズドループ地熱技術“Evor-Loop” など
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