2024年2月28日

【脱炭素の論点】第2回 社会を元気にするという視点から

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脱炭素の論点第2回「社会を元気にするという視点から」

脱炭素の様々なテーマからピックアップして解説する『脱炭素の論点』。第2回は、社会を元気にするという視点から「脱炭素」を解説していきます。

脱炭素の論点第2回「社会を元気にするという視点から」

ゆでがえるくん プロフィール

地球温暖化を甘く見て、ライフスタイルや経済の仕組みを変えられない人類をイメージして、
AIが作り出したバーチャルなカエル。
徐々に鍋で茹でられているが、気がついていない。人類と一緒に、脱炭素について勉強する必要性を感じている。


※ゆでがえるくんは、画像生成AIによって生まれました!

※本記事の文章は『最新図説 脱炭素の論点 2023-2024(出版:旬報社)』から著者及び出版社の許可を得て抜粋したものです

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元気が出る脱炭素の展望

省エネと再エネ導入で、現在の生活の利便性を落とすことなく、「脱炭素」システムに移行する場合、経済的にはどのような変化がおこるのでしょうか。

国産の再エネを使用するようにして、輸入に頼っている化石燃料を代替すれば、燃料輸出国に毎年払っている「対外エネルギー支払い」がなくなります。

さらに、最近の燃料高騰のようなかたちで、国外の情勢によって左右されることがなくなるほか、災害時にも自前のエネルギー供給の体制ができ、国および地域の持続可能性が高まるのです。

つまり、「脱炭素」による地球規模の気候変動対策は、国および地域の持続可能な経済構造への移行と一体のものにできるのです。

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必要な投資の対象

移行のためには、省エネと再エネ導入に大きな投資が必要ですが、それを大きく上回る対外エネルギー支払いの節約分が見込めます。

ただし、移行すべき未来は、単なる「エネルギーの地産地消」ではないのです。太陽光も風力も時間や季節とともに大きく変動します。

また、需要地から遠いところにある自然エネルギーも多いほか、災害や事故で地域の再エネが使えなくなったりもします。

ですから、地域間の電力の融通は必須で、送電網(「系統」といいます)の大幅な増強が必要になります。

これも、移行のための投資の重要な部分です。

関連して、蓄電設備も必要になります。

ただし、電気自動車(EV)の持っている蓄電池の活用も効果的と考えられています。

ここでは、そういった投資のための原資は本当にあるのかを、簡単にみていきます。

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国レベルでの対外エネルギー支払い

図表1、2はこれまでの日本の対外支払いの推移と、品目・相手国別の貿易収支を示します。

エネルギー支払いは全対外支払いの主要部分(30%弱;毎年15-25兆円)を占め、最近急増しています[→図表1]

日本が貿易赤字になっている品目は、燃料とブランド品だということが、図表2から読みとれます。

「2030年までに46%の削減」(政府方針;2013年比)を行うための原資は、現状維持のときの10年分の対外エネルギー支払い積算額の半分としても、およそ50兆円になります。

現在の円安が続けば、さらに大きな効果が見込めるでしょう。

ゆでがえるくん「国内でエネルギーを創ることが大事なんだケロ」
脱炭素の論点第2回_図表1
脱炭素の論点第2回_図表2

地域の燃料費の対外支払いの状況を、統計データにもとづいて、市、町、村それぞれについて試算した例を図表3に示します。

国全体の場合と同様に、省エネと再エネ導入を進めることで多額のお金を節約できることがわかります。

ただし、地域の再エネの実態には注意が必要です。

2012年の固定価格買取制度の施行以来、多数のメガソーラーが全国に建設されました。

制度上の配慮が不足し、地域からの取組みは大幅に遅れ、全国各地にある発電設備は東京や大阪など外部の設置者に帰属します[→図表4]

地域には、わずかな固定資産税収入があるだけです。地域経済に寄与せず、山林の乱開発による景観破壊や土砂災害などが発生しているため、風力にもメガソーラーにも、反対運動が全国でおきています。

どう考えたらよいでしょうか。

脱炭素の論点第2回_図表3

次世代のためには、乱開発は止め、地域のレジリエンスと持続性を高めるエネルギー自給の道も開拓していかなければなりません。

そのためには、再エネを、自治体、地域事業者および住民の参加のもとに計画し、地域の金融機関の支援も得て、地域に帰属する施設として導入することが肝要です。

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地域が地域のエネルギー資源に再び目を向ける時代

第二次世界大戦後もしばらくは、薪や炭などのバイオマスや、動力源として地域の小水力が活用されていました。

脱炭素の論点第2回_図表4

また、戦後の農村電化政策により、とくに中国地方で普及した集落ごとの小水力発電も、老朽化や、大型火力発電所の増強とともに、廃れていきましたが、今になって、これらが見直されています。

地域の資源を地域の人びとが再発見し、地域の合意の中で利用することが「脱炭素」への重要な手掛かりとなります

脱炭素の論点第2回「社会を元気にするという視点から」

出典:『最新図説 脱炭素の論点 2023-2024』 序章②社会を元気にするという視点から

最新図説 脱炭素の論点 2023-2024

出版社:旬報社

著者 :一般社団法人 共生エネルギー社会実装研究所 (編著)
    堀尾 正靱(編集主幹)他

発売日:2023年5月29日

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