近年、地球温暖化による異常気象や災害の頻発が社会問題となる中、持続可能でレジリエンスの高いエネルギーシステムの必要性が高まっています。
そうした課題への現実的な解決策として注目されているのが「マイクログリッド」です。
本記事では、マイクログリッドの特徴やメリット、課題などをわかりやすく解説します。
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マイクログリッドとは?
マイクログリッド(Microgrid)とは、特定の地域や施設単位で電力の発電・供給・管理を行う小規模な電力網のことです。
太陽光や風力といった再生可能エネルギー、蓄電池、燃料電池、ディーゼル発電機などの分散型電源を組み合わせて構成され、通常は大規模な電力網(マクログリッド)と接続して電力をやり取りしています。
また、災害などで外部の送電網が停止した場合には「アイランドモード(独立運転)」に切り替えることで、自立して電力供給を継続することが可能です。
さらに、AIやIoTを活用したエネルギーマネジメントにより、電力の需要と供給をリアルタイムで最適に制御し、効率的かつ環境負荷の少ないエネルギー利用を実現します。
マイクログリッドのメリット
マイクログリッドは、エネルギーの安定供給や災害対策など多くのメリットがあります。
ここでは、6つのメリットに分類して詳しく紹介していきます。

災害時の電力供給(レジリエンス強化)
非常時に独立運転(アイランドモード)が可能
マイクログリッドは通常、メインの電力網(グリッド)と接続されていますが、災害や停電が発生した際には独立して稼働することができます。
そのため、防災拠点や病院、避難所などに設置することで、停電時でも重要な施設へ電力を供給できます。
実際に、2011年の東日本大震災では、大規模停電が発生したが、東北の一部のマイクログリッドは稼働し続け、電力を確保することができました。
近年では、日本各地で発生する台風や地震に備えて、マイクログリッドを活用した防災対策を進めている自治体もあります。
電力供給の分散化でブラックアウトを防ぐ
大規模な停電(ブラックアウト)は、中央集権型の電力網が破損したときに発生します。
しかし、マイクログリッドが各地に分散していると、一部の電力供給が途絶えても他の地域がカバーできます。
エネルギーコストの削減
送電ロスの削減
通常、発電所から遠い地域へ電力を送る際には送電ロス(電気が送られる間に消失するエネルギー)が発生します。
しかし、マイクログリッドでは電力を地産地消できるため、このロスを最小限に抑えることが可能です。
ピークカット・ピークシフトによる電力料金削減
電力料金は、需要が高い時間帯(ピーク時間帯)に高くなる傾向があります。
マイクログリッドでは、蓄電池に電力を貯めておき、ピーク時間帯に使用することでコストを削減できます。
【例】
- ピークカット:工場や商業施設が昼間の電力消費を抑え、太陽光発電+蓄電池で補う
- ピークシフト:夜間の安い電力を蓄電し、昼間に使用する
電力の自家消費で電力料金を削減
企業や自治体が再生可能エネルギー(太陽光や風力)を活用することで、電力会社から購入する電力を減らし、コスト削減が可能になる。
環境負荷の低減(脱炭素社会への貢献)
再生可能エネルギーの活用
マイクログリッドは、主に以下のクリーンエネルギーを利用します。
- 太陽光発電
- 風力発電
- 小水力発電
- バイオマス発電
- 燃料電池
これにより、化石燃料への依存を減らし、CO₂排出量を大幅に削減できます。
SDGsやESG投資にも貢献
企業がマイクログリッドを導入することで、環境負荷を低減し、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)に対応できます。
これにより、投資家からの評価向上や、環境意識の高い企業としてのブランディングにもつながります。
電力の安定供給
再生可能エネルギーの変動を蓄電池でカバー
太陽光や風力発電は、天候に左右されやすく、供給が不安定になりがちです。
しかし、マイクログリッドでは蓄電池(バッテリー)を活用することで、電力を安定供給できます。
例えば、昼間の太陽光発電で余った電力を蓄電して夜間に使用したり、強風の際の風力発電を貯めておいて、無風時に利用するといった対応ができるようになります。
停電のリスク低減
マイクログリッドは、メインの送電網に問題が発生しても、分散型のエネルギー供給が可能なため、停電の影響を最小限に抑えることができます。
電力の地産地消と地域経済の活性化
地域のエネルギー的自立
マイクログリッドを導入することで、地域での電力生産・消費が可能になり、外部からの電力供給に依存しない持続可能なエネルギーシステムを確立できます。
例えば、送電コストの高い離島や山間部にマイクログリッドを導入することで、コストを下げてエネルギー自給率を高め、持続可能な街づくりを推進することができます。
地域経済への貢献
地域で発電した電力を地元の企業や家庭に供給することで、地元経済の活性化につながります。
また、地域のエネルギー会社や関連産業の雇用創出にも貢献することができます。
スマートグリッド技術の活用
AIやIoTを活用したエネルギーマネジメント
近年では、マイクログリッドにスマートグリッド技術(AI・IoT・データ解析)が導入され、エネルギーを最適に管理・制御できるようになっています。
例えば、AIが電力の需要予測を行って最適なエネルギー配分を指示したり、IoT機器で企業の電力消費をリアルタイムにモニタリングするなど、エネルギーの需給バランスを自動調整して電力のムダを削減することができます。
マイクログリッドの課題
メリットが多い「マイクログリッド」ですが、以下のような課題もあります。
初期コストの高さ
マイクログリッドの構築には、再生可能エネルギー設備や蓄電池、制御システムなどが必要で、初期投資が大きいのが課題です。
エネルギーの安定供給
再生可能エネルギーは天候に左右されやすいため、供給が不安定になる場合があります。
より安定して供したいなら、エネルギーマネジメント技術の高度化が必要となります。
規制や制度の整備
日本では、電力の自由化が進んでいるものの、地域ごとの電力供給に関する規制があり、マイクログリッドの導入がスムーズに進まない場合もあります。
まとめ
マイクログリッドは、再生可能エネルギーの普及やエネルギーの地産地消の観点から、今後ますます重要性が増していきます。
特に、分散型エネルギーシステムの発展やスマートグリッドとの融合により、より効率的で持続可能なエネルギー供給が実現することが期待されています。
今後は、スマートグリッド技術やエネルギーマネジメントシステム(EMS)の進化などで課題を解決しつつ、より効率的な運用ができることを期待されています。
【参考サイト】
・資源エネルギー庁┃地域マイクログリッド構築の手引 など
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