近年、地球温暖化対策やエネルギーの安定供給の観点から、再生可能エネルギーの導入が急務となっています。
その中でも、風の力を利用して発電する風力発電は、二酸化炭素(CO2)を排出しないクリーンな発電方式として世界中で注目を集めています。
特に、日本のような国土が狭く、陸上に大規模な風力発電施設を設置するのが難しい国では、広大な海域を活用できる洋上風力発電が有力な選択肢とされています。
本記事では、風力発電の基本から洋上風力発電の仕組み、メリット・課題について詳しく解説していきます。
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風力発電とは?
風力発電とは、風の力で風車を回し、その回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電方式です。
再生可能エネルギーの一つとして、化石燃料を使わないクリーンな発電方法であり、脱炭素社会の実現に貢献すると期待されています。
風力発電の基本的な仕組み
風力発電は、以下の流れで電力を生み出します。
1. 風が吹くと風車のブレード(羽根)が回転する
2. 回転エネルギーが発電機に伝わり、電気を作る
3. 変電所を通じて電圧を調整し、電力網へ送電する
つまり、風が吹けば吹くほど、より多くの電力を生み出せる仕組みです。
風力発電のメリット
CO₂を排出しないクリーンエネルギー
化石燃料を使わず、温室効果ガスを出さない。
無尽蔵のエネルギー
風が吹き続ける限り、枯渇することなく発電可能。
エネルギー自給率の向上
風を活用することで、石油や石炭の輸入依存を減らせる。
発電コストが低下傾向
技術の進歩で発電コストが下がりつつある
風力発電の種類
風力発電は、陸上に設置する「陸上風力発電」と洋上に設置する「洋上風力発電」 の2つに分けられます。
今回は、洋上風力発電について詳しく解説してきます。
洋上風力発電とは?
洋上風力発電とは、海上に風力発電機(風車)を設置して風の力で発電する再生可能エネルギーの一つです。
洋上風力発電には、以下の2つの設置方式があります。
① 着床式(固定式)
水深50m以下の海域に、海底に直接基礎を固定して風車を設置する方式
- メリット:構造が安定し、技術的に確立されている
- デメリット:水深が深いと設置が難しく、適した場所が限られる
② 浮体式
水深50m以上の海域に、浮体構造を用いて風車を設置する方式
- メリット:水深の深い沖合にも設置可能で、風が強い場所を活用できる
- デメリット:技術開発段階であり、コストが高い
洋上風力発電のメリット
近年、洋上風力発電が注目されているのは、陸上に比べて多くのメリットがあるためです。
特に、発電効率の高さや土地利用の自由度、周辺環境への影響の少なさが評価され、世界各国で導入が進んでいます。
ここでは、洋上風力発電の主なメリットを詳しく解説します。
風が強く安定しており、高い発電効率が期待できる
海上は陸上に比べて地形の影響を受けにくく、障害物が少ないため、風の流れがスムーズです。
特に沖合では年間を通じて風が強く吹くため、安定した風力エネルギーを活用でき、発電効率が向上します。
さらに、夜間や冬季でも比較的風が安定しているため、季節や時間帯による発電量の変動が少なく、電力供給の安定性が高まるという利点があります。
陸上の土地利用制約がなく、大規模な発電が可能
陸上風力発電では、適した立地の確保や住民との調整が必要ですが、洋上風力発電ではそうした制約が大幅に軽減されます。
特に、日本のような国土が狭い国では、陸上で大規模な風力発電施設を建設するのは難しいですが、海上であれば広大なスペースを活用でき、大規模な発電施設を設置しやすいというメリットがあります。
加えて、風力発電の適地が増えることで、再生可能エネルギーの導入量を大きく拡大できる可能性もあります。
騒音や景観への影響が少ない
陸上風力発電では、風車の回転による低周波音や騒音、景観への影響が問題視されることがあります。
しかし、洋上風力発電は海上に設置されるため、周辺住民への影響がほとんどないという利点があります。
特に、沖合に設置する場合、住民の生活圏から遠いため、風車の騒音や影のちらつき(フリッカー)による影響も最小限に抑えられるのが特徴です。
また、陸上の風車と違い、景観を損なうことも少なく、地域の観光業への影響を抑えることができます。
洋上風力発電は、陸上風力発電と比較して発電効率の向上、土地利用の柔軟性、周辺環境への影響の少なさといった点で大きな優位性を持っています。
これらのメリットを活かしながら、今後さらに技術開発が進むことで、より効率的で持続可能なエネルギー供給源としての役割が期待されています。
洋上風力発電の課題
洋上風力発電は、多くのメリットを持つ一方で、コストや海洋環境といった課題も抱えています。
建設・メンテナンスコストが高い
洋上風力発電は、設置や維持管理にかかるコストが高いという課題を抱えています。
まず、設置コストですが、海上では、風車を支える基礎の設置や組み立てに加え、発電した電力を送るためのインフラ整備が必要になります。
特に水深の深い場所では、浮体式風車の導入が求められ、さらにコストが上昇します。
次に、メンテナンスの難しさです。
海上の風車は、塩害や強風、高波といった過酷な環境にさらされるため、定期的な点検や修理が必要ですが、その作業には特殊な船舶や技術を持つ作業員が必要となり、費用がかさむ上、天候の影響で作業が制限されることもあります。
さらに、送電設備の整備にも高額な投資が求められます。
海上で発電した電力を陸上に送るためには海底ケーブルの敷設が必要となり、その維持管理にもコストがかかります。
これらの課題を克服するには、技術革新や、大規模な導入によるコスト削減が不可欠です。
海洋環境への影響
洋上風力発電はクリーンエネルギーとして注目されていますが、海洋生態系への影響が懸念されています。
まず、水質や水流の変化が問題となる可能性があります。風車の設置によって水が濁ったり、水質が変化したりすることで、海洋生物の生息環境に影響を及ぼすことが考えられます。
次に風車の稼働による騒音や振動による影響です。
特にクジラやイルカなどの音に敏感な生物にとっては、これが回避行動を引き起こす原因となることが指摘されています。
さらに、海底環境の変化も懸念されています。
風車の基礎部分が人工的な岩礁のような役割を果たし、新たな生態系を形成することがある一方で、従来の生態系に悪影響を及ぼす可能性もあります。
こうした影響を最小限に抑えるためには、環境影響評価(アセスメント)を十分に実施し、設置場所や施工方法を慎重に検討することが不可欠です。
漁業との共存
洋上風力発電の設置が漁業に影響を与える可能性があり、共存のための調整が必要となります。
まず、風車の設置区域では漁業活動が制限されることがあります。
特に定置網漁業や底引き網漁業は影響を受けやすく、操業エリアの縮小につながる恐れがあります。
また、風車の設置による海洋環境の変化が魚の生息環境に影響を与え、漁獲量が変動する可能性もあります。
騒音や水質の変化によって漁獲量が減少することが懸念される一方で、風車の基礎部分が魚礁のような役割を果たし、一部の魚介類が増加するケースもあります。
こうした問題を解決するためには、地元の漁業関係者との協議を十分に行い、双方が共存できる方法を模索することが求められます。
まとめ
風力発電は、再生可能エネルギーの中でも環境負荷が少なく、持続可能なエネルギー供給を実現する方法として期待されています。
特に洋上風力発電は、風力の安定性や土地利用の柔軟性といったメリットを持ち、日本を含む世界各国で導入が加速しています。
一方で、建設・維持コストの高さや海洋環境への影響、漁業との共存といった課題も無視できません。
これらの課題を解決するためには、技術革新やコスト削減、環境への配慮、地域との調整が必要不可欠です。
今後、洋上風力発電の導入拡大に向けて、政府や企業、地域社会が連携し、持続可能なエネルギーシステムを構築することが求められます。
技術の進歩と適切な政策支援によって、洋上風力発電が日本の脱炭素社会の実現に向けた大きな柱となる日もそう遠くないかもしれません。
【参考サイト】
・独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)┃洋上風力発電って何がすごい?日本における再生可能エネルギーのメリットを解説!
・公益財団法人 海洋生物環境研究所┃洋上風力発電に係る漁業影響調査について など
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