近年、気候変動や環境問題への対応は、企業活動において避けて通れないテーマとなっています。
特にSDGs(持続可能な開発目標)やパリ協定に基づく取り組みが強く求められる中、企業の環境目標に対する信頼性を示す指標として注目を集めているのが SBT です。
本記事では、SBTとは何か、認定を取得するメリット、そして取得の具体的なステップについて詳しく解説します。
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SBTとは?
SBTとは、「Science Based Targets」の略で、パリ協定の目標である「産業革命前と比べて世界の平均気温上昇を1.5℃未満に抑える」ための科学的根拠に基づいた温室効果ガス削減目標を意味します。
具体的には4.2%/年以上の削減を目安として、現在から5年~10年先の目標を設定します。
引用:環境省┃SBT(Science Based Targets)について
これは企業が持続可能な経営を行うための国際的な指標となっており、例えば、製造業や物流業界では、自社の排出量を削減するだけでなく、サプライチェーン全体での排出量削減が求められています。
SBTは、国際的な組織「SBTイニシアチブ(Science Based Targets initiative)」によって認定が行われています。
本組織は以下の4つの期間が共同で運営しています。
組織 | 概要 |
CDP (Carbon Disclosure Project) |
・企業の気候変動、水、森林に関する世界最大の情報開示プログラムを運営する英国で設立された国際NGO ・世界約23,000社の環境データを有するCDPデータは740超の機関投資家のESG投資における基礎データとしての地位を確立(2024年3月時点) |
国連グローバル・コンパクト(UN Global Compact) | ・参加企業・団体に「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の4分野で、本質的 な価値観を容認し、支持し、実行に移すことを求めているイニシアチブ ・1999年に当時の国連事務総長が提唱し、現事務総長のアントニオ・グテー レスも支持。現在約2万4000の企業・団体が加盟(日本は597の企業・ 団体が加盟(2024年3月時点)) |
世界資源研究所 (WRI) |
・気候、エネルギー、食料、森林、水等の自然資源の持続可能性について調査・研究を行う国際的なシンクタンク ・「GHGプロトコル」の共催団体の一つとして、国際的なGHG排出量算定基準の作成などにも取り組む |
世界自然保護基金 (WWF) |
・生物多様性の保全、再生可能な資源利用、環境汚染と浪費的な消費の削減を使命とし、世界約100カ国以上で活動する環境保全団体 |
引用:環境省┃SBT(Science Based Targets)について
本イニシアチブでは、企業が設定する温室効果ガス削減目標が、パリ協定に基づく科学的根拠に沿っているかを評価し、認められればSBT認定が取得できます
では、このSBT認定を取得すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
SBT認定を取得するメリット
SBT認定を取得することで、企業は環境への取り組みを科学的に証明し、持続可能な経営を実現する大きなメリットを得られます。
経信頼性と企業価値の向上
SBT認定を受けることで、企業の環境目標が科学的根拠に基づいていることが証明されます。
これは取引先や顧客、投資家からの信頼を得るための大きな要素です。
特に、サプライチェーン全体で環境対策が求められる現在、認定を受けた企業は競争力を強化できます。
コスト削減と効率化の実現
SBT認定を目指す過程で、エネルギー使用量や排出量を正確に把握し、削減方法を検討するため、結果的にコスト削減が期待できます。
エネルギー効率の改善や省エネ技術の導入は、経費削減にも直結します。
ステークホルダーからの評価向上
顧客や投資家だけでなく、地域社会や従業員からの評価も向上します。
特に環境意識の高い世代をターゲットにする企業にとって、SBT認定は「持続可能性に配慮した企業」というブランド価値を高めることができます。
このメリットを最大限に活用することで、企業は環境への貢献とともに、自社の競争力やブランド価値を向上させることができます。
SBT認定数は世界中で年々増加
SBT認定数は、2024年3月までで世界4,779社、日本でも904社となっており、増加傾向にあります。
日本では以下のようの企業が既に取得しています。
- 旭化成ホームズ
- サントリーホールディングス
- 東洋紡
- 花王
- 大塚製薬
- ブリヂストン
- YKKAP
- パナソニックホールディングス
- トヨタ自動車
- ANAホールディングス
- NTTデータ
SBT認定へのステップ
実際にSBT認定を取得する場合は、以下のような手順を踏むことが必要です。
➊削減目標の設定
自社の排出データをもとに、科学的根拠に基づいた目標を策定します。この段階では、具体的な排出量の把握と、それを削減するための実現可能な目標を設定する必要があります。
まずは自社の温室効果ガス排出量を測定、削減可能な項目を特定し、それを元に目標を設定します。
SBTイニシアチブは、以下のような基準に基づいて目標を評価しますので、参考にしましょう。
- 1.5℃目標の整合性: 設定された目標が地球温暖化を1.5℃以内に抑えるシナリオに合致しているか
- 長期・短期目標: 5~10年の短期目標と、2050年までの長期目標の両方が設定されているか
- 排出範囲のカバー: Scope 1(自社直接排出)、Scope 2(購入エネルギー由来の排出)、必要に応じてScope 3(サプライチェーン全体の排出)を対象としているか
➋目標の提出
設定した目標をSBTイニシアチブに提出し、レビューを依頼します。
目標設定が適切であるかどうかを確認するために、詳細なデータと計画を提出する必要になりますので、準備しておきましょう。
【必要な資料】
- 温室効果ガス排出量データ(Scope 1, 2, 3)
- 目標設定の詳細な根拠
- 削減施策や実行計画の概要
➌審査と認定
提出された目標が基準を満たしているか、SBTイニシアチブが審査を行います。
基準をクリアすると、正式にSBT認定企業として登録されます。
認定が完了すると、SBTイニシアチブのウェブサイトで企業名が公表されます。
企業は「SBT認定企業」として、自社の削減目標をアピールできます。
ただ、認定された後も、進捗状況を定期的に報告する必要があります。
報告内容が基準を満たさなくなった場合、認定の取り消しや再審査が行われることがありますので注意しましょう。
まとめ
SBT認定は、気候変動への対応が企業経営の重要課題となる中で、科学的な根拠に基づく温室効果ガス削減を推進するための強力なツールです。
この認定を取得することで、企業は環境への真摯な取り組みを示しつつ、信頼性や競争力を高めることができます。
特に中小企業にとって、SBT認定は環境問題への対応だけでなく、経費削減やブランド価値の向上、さらには新たなビジネス機会の創出にもつながるメリットがあります。
未来志向の持続可能な経営を目指す企業にとって、SBTは避けて通れない選択肢となるでしょう。
環境への貢献とビジネスの成功を両立させる第一歩として、ぜひSBT認定の取得を検討してみてはいかがでしょうか?
【参考サイト】
・環境省┃SBT(Science Based Targets)について
・環境省┃SBT等の達成に向けたGHG排出削減計画策定ガイドブック など
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