DEレポートNo.58
熱中症ゼロへ~ 今後の対策の在り方 ~
対象のSDGs目標


【著者コメント】
私は普段の仕事で作業現場に訪問することがあり、炎天下の中で作業されている方を目にする機会があります。
また、そのような方との会話や実際に自分も現場立ち会いを行う中で、過酷な環境だと実感することが多々あるため、改善に向けて国や自治体、企業がどのような取り組みをしているのか気になり、今回この記事を書きました。
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1.熱中症による被害の現状
- 総務省のデータによると、熱中症による国内の救急搬送者数が十数年で倍増している。平成20年:約2万3千人 ⇒ 令和6年:約9万7千人
- その中で、熱中症患者の比率を年齢別に見ると、高齢者が(満65歳以上)が最も多くて57.4%、次いで成人(満18歳以上満65歳未満)が33.0%、少年(満7歳以上満18歳未満)9.0%、乳幼児(生後28日以上満7歳未満)0.6%となっている
- 成人以上の搬送者数が全体の9割となっており、このことから大人でも気づかないうちに熱中症となってしまっていることがわかる
- また、高齢者の熱中症発生場所は住宅等居住場所が53.7%とほぼ半数となっている
→ 特に高齢者に向けた熱中症対策の周知が必要
2.業種別に見る熱中症の死傷者数
- 次に厚生労働省のデータを見ると、熱中症による職場での死傷者数は、2014年の423人から2023年には1,106人と、こちらも増加している
- 死傷者数を業種別の割合で比較すると、建設業21%、製造業20%の二業種が特に高く、その次が運送業となっている。
- これらの業種は体への負荷が⾼い作業が多く、特に建設業に関しては過酷な環境下で発汗もしやすいため熱中症が発症しやすい
- また、建築物の規模が大きくなるほど周囲への影響も大きくなるため、決められた工期での完了を目指すあまりに、無理をしてしまっているケースも少なくないというのが実情
→個人での対策だけでは限界
3.自治体、地域による取り組み事例
- 年齢別で見ると高齢者、働き世代の中では建設業が特に問題視される中、独自に熱中症対策を行っている自治体も出てきている
- 熱中症予防についてチラシでの注意喚起、温湿度計の配布。また、保健所が主体となり、地区民生委員の協力のもと75歳以上の独居高齢者に対して、見守りや声掛けを実施。アンケート結果を協力者へフィードバック、施策への反映を実施(実例:鳥取市等)
- エアコンが稼働しており、数人が休憩可能なスペースを確保した施設(涼み処)を設置。体調不良者には飲料や冷却シート、タオルなど提供(実例:世田谷区、佐野市)
→まだ一部の自治体、地域だけにとどまっている
4.都、企業としての取り組み ~対策の多様化と今後の取り組みへの期待~
- 環境省は、令和6年4月24日(水)から、「熱中症警戒アラート」と「クーリングシェルター」の運用を開始
- クーリングシェルターとは、熱中症特別警戒アラートが発表された際に、暑さをしのぐために開放される施設のことで、令和6年8月14日時点で、全国で757の市区町村にて指名されており、猛暑時に誰でも利用することが可能
- 企業としても、インフォテリア株式会社が「最高気温35度以上が予想される日はテレワークを推奨する」という制度を2015年から導入し、日本テレワーク協会より、「テレワーク実践部門 奨励賞」を受賞している
- また厚生労働省は2025年夏、建設現場を含む事業場で熱中症重篤化の防止策を講じることを罰則付きで事業者に義務化する方針と発表
- 理想としては、熱中症アラートにもう1段階上を設けて、外出禁止、屋外作業禁止などの強制力を持たせることや、どうしても必要な場合は、真夏日、猛暑日など、気温別によって手当を支給する等、労働者の環境改善が進み、士気の向上と事故の削減が進んでほしい
→熱中症対策を企業、個人、それぞれで考える必要がある
【参考サイト】
・ 総務省│令和6年(5月~9月)の熱中症による緊急搬送状況
・ 環境省┃地域における熱中症対策の先進的な取組事例集 など
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