脱炭素の様々なテーマからピックアップして解説する『脱炭素の論点』。
第13回は、CO2濃度と気温の長期的な関係、および人間活動がもたらす温暖化の影響について解説します。

※本記事の文章は『最新図説 脱炭素の論点 2025-2026(出版:旬報社)』から著者及び出版社の許可を得て抜粋したものです
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過去の気候は、様々な時間スケールで、自然の原因で変動しています。
気温変動が生じた結果としてCO2濃度が変化した場合もありますが、それは近年の温暖化が人間活動によるCO2濃度増加などの結果であることと矛盾しません。
10万年スケールの変動(氷期-間氷期サイクル)
地球の気候は、およそ10万年の周期で寒い氷期と暖かい間氷期を繰り返してきたことがわかっています。
その原因は、木星などの重力の影響による、地球の公転軌道と自転軸の周期的な変動です。
この気温変動にあわせて、大気中のCO2濃度も変動します[→図表1]。
このサイクルでは、気温が変化して、結果としてCO2濃度が変化します。
このCO2濃度変化がさらに気温変化を増幅するフィードバックとして働きます。
つまり、自然界には、気温変化→CO2濃度変化と、CO2濃度変化→気温変化という両方のメカニズムが存在しています。
したがって、氷期-間氷期において気温変化→CO2濃度変化の関係があることと、近年の温暖化が人間活動によるCO2濃度増加→気温上昇の関係であることとは矛盾しません。
CO2濃度は氷期の約180pmと間氷期の約280ppmの間で変動します。
これに対して、人間活動は産業革命前の280ppmから現在の420ppm超まで上昇をもたらしています。
このように、人間活動の影響はすでに自然の要因を凌駕しています。
また、現在の間氷期が始まり1万2000年ほど経っていますが、次の氷期が訪れうるタイミングは、約5万年後であることがわかっています。


数百年スケールの変動
過去2000年程度の気候変動は、木の年輪などの間接的なデータを用いて調べられています。
産業革命がおきるまでは、大気中CO2濃度は安定していましたが、太陽活動の変動や火山噴火が原因と考えられる、数百年スケールの変動がおきていたと考えられています。
とくに、300年前頃を中心に「小氷期」と呼ばれる寒冷期がありました。
この間、太陽活動が極めて不活発であったことがわかっていますが、火山噴火も寒冷化の原因と考えられます。
小氷期の世界平均気温の低下は大きく見積もっても0.5℃程度ですが、産業革命以降の人間活動による温暖化は1℃を超えています[→図表2]。
このことからも、人間活動の影響が自然の要因を凌駕していることがわかります。
数年スケールの変動
数年の時間スケールのCO2濃度の変動を取り出して気温変動と比較すると、気温変動に数ヵ月遅れてCO2濃度が変動する様子がわかります[→図表3]。
これは、たとえばエルニーニョ現象により気温が上昇すると、陸上生態系が高温による呼吸の増加、乾燥による光合成の抑制、森林火災の増加などによりCO2を放出するためと考えられます。
この時間スケールでは気温変化→CO2濃度変化のメカニズムが強く現れます。
このことはCO2濃度増加→気温上昇と両立することであり、人間活動による温暖化の因果関係とは矛盾しません。


出典:『最新図説 脱炭素の論点 2025-2026』 第1章2 CO2濃度と気温の関係
著者:江守正多
脱炭素の論点とは?
地球温暖化が深刻化する昨今、「脱炭素」への理解をより深めて頂こうと、脱炭素を分かりやすく解説する書籍『最新図説 脱炭素の論点』の論点を連載しています。

図説 脱炭素の論点 2025-2026
出版社:旬報社
著者 :一般社団法人 共生エネルギー社会実装研究所 (編著)
堀尾 正靱(編著)他
発売日:2025年6月6日
詳しくは、旬報社公式サイトの書籍情報ページでご確認ください。
「脱炭素の論点」では、上記書籍から脱炭素に関わる様々なテーマをピックアップし、人類の脱炭素の必要性を体現したイメージキャラ「ゆでがえるくん」と一緒に脱炭素について学ぶことができます。

イメージキャラクター
ゆでがえるくん
ゆでがえるくん プロフィール
地球温暖化を甘く見て、ライフスタイルや経済の仕組みを変えられない人類をイメージして、AIが作り出したバーチャルなカエル。
徐々に鍋で茹でられているが、気がついていない。
人類と一緒に、脱炭素について勉強する必要性を感じている。


