脱炭素の様々なテーマからピックアップして解説する『脱炭素の論点』。
第9回は、未来のエネルギー供給のために再エネを選ぶことの重要性について解説します。

※本記事の文章は『最新図説 脱炭素の論点 2023-2024(出版:旬報社)』から著者及び出版社の許可を得て抜粋したものです
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2016年からの電力の小売全面自由化で、一般消費者も電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになりましたが、将来の安価で安定的なエネルギー供給につなげるには、「電気を選ぶ」ことが重要です。
消費者からみた電力自由化
脱炭素達成のために、エネルギーを大幅に再エネにシフトしていくには、電力自由化推進と電力小売りに新たに参入する「新電力」による電力市場の活発化は不可欠と言われています。
電力自由化は日本でも徐々に進められ、2016年からの電力の小売全面自由化で、多くの新電力(小売電気事業者)が設立され、一般消費者も電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになりました。
電力供給システムは、戦後復興と高度経済成長の膨大な電力需要増に応えていくために、長らく発送電一貫・地域独占型でしたが、過度な独占は過剰な品質重視や設備投資によるコストと電気料金の高止まりにつながる懸念があります。
当然消費者にとっては、安定的な電力供給が安い料金で達成されることが望ましいということになります。
そこで、地域独占を撤廃し、新規参入企業を増やし、電力会社の間の競争を激しくし、消費者の負担を軽減しようとするの が電力自由化の目的の一つです。

再エネシフトと電力自由化
電力自由化は、競争による「安さ」追求のためだけではない、ということに留意が必要です。
気候危機は、エネルギー供給の持続可能性自体を脅かすものであり、CO2排出のない再エネ電力への転換を進める必要があります。
旧来からの地域独占電力会社は、過去に多額投資をした化石燃料由来の発電設備を多く有しており、投資した以上の利益を生み出そうとするのが経済合理性で、再エネ転換への主導的役割を期待するのは困難です。
そこで、再エネ電力を中心とした発電・販売を担う新規参入者が電力事業に大いに参入できる環境をつくり、エネルギーシフトを実現しようとする政策が、電力自由化(地域独占していた電力会社の発送電分離含む)とセットで導入された再エネの固定価格買取制度(FIT)です。

電気を選ぶ、ということ
ただし、電力自由化とFIT導入の一方で、日本の電力供給の約80%は、今でもかつて地域独占していた旧・一般電気事業者(旧一電)の発電部門(しかも化石・原子力電源中心)が担っています。
そのため、電力市場は旧一電に売り手の大半を依存する寡占状態が続いています。
そのような状況下で異常な電力市場の高騰が2020年冬から見られるようになりました。
多くの新電力が経営難に喘ぎ、電気料金も値上がり傾向のなか、さらにウクライナ危機で電力需給ひっ迫が危惧されるなど、残念ながら日本の電力供給システムは、エネルギーシフトも、安価で安定的供給にも程遠い状況です。
目先の「安さ」も実感できず、安定供給さえ不安があったとしても、電気のない生活はできません。それなら、思い切って「応援消費」に切り替えてみるのはいかがでしょうか。
将来的に電力供給を担ってもらいたい電源は化石燃料・原子力でしょうか、再エネでしょうか。
誰がどのようにつくり、その利益を誰が享受し、どう利益分配されている電気を応援したいでしょうか。
応援したい電源に切り替えるという小さな行動が、未来のエネルギー供給を大きく変える可能性がある。
それが「電気を選ぶ」ということです。


出典:『最新図説 脱炭素の論点 2023-2024』 第4章79 電気を選ぶ
著者:重藤さわ子
脱炭素の論点とは?
地球温暖化が深刻化する昨今、「脱炭素」への理解をより深めて頂こうと、脱炭素を分かりやすく解説する書籍『最新図説 脱炭素の論点 2023-2024』の論点を連載することとなりました。

図説 脱炭素の論点 2023-2024
出版社:旬報社
著者 :一般社団法人 共生エネルギー社会実装研究所 (編著)
堀尾 正靱(編集主幹)他
発売日:2023年5月29日
詳しくは、旬報社公式サイトの書籍情報ページでご確認ください。
「脱炭素の論点」では、上記書籍から脱炭素に関わる様々なテーマをピックアップし、人類の脱炭素の必要性を体現したイメージキャラ「ゆでがえるくん」と一緒に脱炭素について学ぶことができます。

イメージキャラクター
ゆでがえるくん
ゆでがえるくん プロフィール
地球温暖化を甘く見て、ライフスタイルや
経済の仕組みを変えられない人類をイメージして、
AIが作り出したバーチャルなカエル。
徐々に鍋で茹でられているが、気がついていない。
人類と一緒に、脱炭素について勉強する必要性を感じている。