脱炭素の様々なテーマからピックアップして解説する『脱炭素の論点』。
第11回は、分散型電源をまとめるアグリゲーターの役割と柔軟性市場に解説します。

※本記事の文章は『最新図説 脱炭素の論点 2025-2026(出版:旬報社)』から著者及び出版社の許可を得て抜粋したものです
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VER導入の柔軟性を供給するのは大規模集中電源だけではありません。分散型電源も柔軟性を供給できます。
それらをどのように効率的に利用するかのカギがアグリゲーターです。
配電網における分散型電源
将来のVRE(変動型再生可能エネルギー)の超大量導入を支えるカギとなる技術は柔軟性です。
そして柔軟性は従来型の大規模集中電源のみが供給できる能力ではなく、小規模分散型電源も本来供給可能です。
たとえば欧州では図表1に示す通り、潜在的な柔軟性供給源は配電レベルにも豊富にあると試算されています。
数百から数千の発電事業者を送電事業者が一手に管理することは非効率です。
このように広く多数分散した小規模分散型電源からどのように効率的に柔軟性資源を利用すべきでしょうか。


BRPとアグリゲーター
図表2に発送電分離前の給電システムの体制図(左図)と自由化市場における体制の概念図(右図)を示します。
自由化市場では、需給制御は送電事業者と電力取引所の二頭体制となります。
また、多数の小規模分散型電源は送電事業者と直接情報をやりとりせず、あいだにBRP(需給責任会社)と呼ばれる「代行業者」が介在します。
小規模発電事業者は代行業者であるBRPと契約し、BRPが多数の発電所を集合化(アグリゲーション)して、送電事業者とのやりとりや市場入札を代行し、需給調整に責任を持ちます。
このようにして小規模発電事業者も間接的に市場参加が可能となります。
BRPは日本のバランシンググループ(BG)とほぼ同じですが、欧州のBRPは広域に分散する様々な電源種でポートフォリオを組みリスクヘッジするという金融取引に似た考え方で、市場取引を通じてインバランス料金を最小化することで需給調整に責任を持ちます。


柔軟性市場
欧州では、小規模分散型電源から柔軟性を調達するために、図表4のような柔軟性市場の設立が検討されています。
ここで欧州特有の問題として送電と配電で運用者が異なるという点があり、どちらの運用者が柔軟性市場を開設したほうが効率的かという議論が行われています。
いずれの場合もアグリゲーターによる集合化がカギとなります。
日本の場合は、一般送配電事業者として送配電が同じ事業者で一元管理できるため、日本の方が有利です。
小規模分散型電源からの柔軟性の調達やVRE大量導入にとって、日本こそ優位性があると言えるでしょう。


出典:『最新図説 脱炭素の論点 2025-2026』 第4章108 分散型電源とアグリゲーター
著者:安田 陽
脱炭素の論点とは?
地球温暖化が深刻化する昨今、「脱炭素」への理解をより深めて頂こうと、脱炭素を分かりやすく解説する書籍『最新図説 脱炭素の論点』の論点を連載しています。

図説 脱炭素の論点 2025-2026
出版社:旬報社
著者 :一般社団法人 共生エネルギー社会実装研究所 (編著)
堀尾 正靱(編著)他
発売日:2025年6月6日
詳しくは、旬報社公式サイトの書籍情報ページでご確認ください。
「脱炭素の論点」では、上記書籍から脱炭素に関わる様々なテーマをピックアップし、人類の脱炭素の必要性を体現したイメージキャラ「ゆでがえるくん」と一緒に脱炭素について学ぶことができます。

イメージキャラクター
ゆでがえるくん
ゆでがえるくん プロフィール
地球温暖化を甘く見て、ライフスタイルや経済の仕組みを変えられない人類をイメージして、AIが作り出したバーチャルなカエル。
徐々に鍋で茹でられているが、気がついていない。
人類と一緒に、脱炭素について勉強する必要性を感じている。
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■第11回 分散型電源とアグリゲーター