2024年4月3日

【脱炭素の論点】第3回 世界と日本の取り組みを比較する

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脱炭素の様々なテーマからピックアップして解説する『脱炭素の論点』。第3回は、世界と日本の「脱炭素」への取り組みを比較して解説していきます。

ゆでがえるくん「世界と比べて日本はどうしてるケロ?」

ゆでがえるくん プロフィール

地球温暖化を甘く見て、ライフスタイルや経済の仕組みを変えられない人類をイメージして、
AIが作り出したバーチャルなカエル。
徐々に鍋で茹でられているが、気がついていない。人類と一緒に、脱炭素について勉強する必要性を感じている。


※ゆでがえるくんは、画像生成AIによって生まれました!

※本記事の文章は『最新図説 脱炭素の論点 2023-2024(出版:旬報社)』から著者及び出版社の許可を得て抜粋したものです

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世界は大きく舵を切ってきたが日本は?

化石燃料依存の経済では、GDPとCO2排出量は比例する傾向にありました。

化石燃料経済からの離脱が進むにつれて、両者の比例関係は解消されます。

これはGDPとCO2のデカップリング(両者の関係が切り離された状態)と呼ばれています。

1992年のUNFCCC(気候変動枠組条約)締結のあとのわが国のデカップリングの様子を図表1に示します。

これに対し、多くの国で、図表2に示すように、UNFCCC条約締結後、あるいは京都議定書批准後(ロシアの場合)直ちにデカップリングが始まってきたのです。

脱炭素の論点3図1,図2

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再エネ、蓄電池、電気自動車は急速に低価格化

太陽光発電、風力発電など再エネ利用のほか、蓄電池や電気自動車の普及と価格の低下が世界的に進んでいます。

1973年のオイルショックのあと、日本では「新エネルギー総合開発機構(当時の名称)」(NEDO)が設立され、太陽光発電や風力発電の技術開発を世界に先駆けて行っていました。

しかし、その勢いはその後海外勢にとってかわられてしまいました。

日本では全体に工事費が高止まりしているほか、官需と民需の価格差が大きいことなど、課題が山積しています。

それらの背景には構造的な課題があるという見方もあります※1。

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再エネ比率の上昇

世界の先進地域では、再エネ電力が50%を超えるような時間帯も現れています。

図表3はドイツの例で、風力が50%を超える日も続いていますし、広域送電網により、エネルギー輸出も頻繁に行われていることがわかります。

脱炭素の論点3図表3、図表4

ドイツの電力の総発電量に占める再エネ比率は2021年40.5%、2022年は44.6%に達しています※2。

日本の2021年(暦年)、自家用を含む全発電電力量中の再エネ比率は22.4%※3でした。

図表4は、2019年の世界各国と日本の、再エネ電力比率です。

2021年に公表された第6期エネルギー基本計画では、2030年までに再エネ比率を36-38%にするとしています。

これらは、日本にある再生可能エネルギーの利用の取組みが、諸外国に比べ、なおかなり遅れていることを示しています。

もちろん、日本の状況も変わりつつあります。

図表5は九州の例で、太陽光発電量が50%を超える時間も発生しています。

日本の取組みの遅れは、石炭火力削減の遅れにも見てとれます。

図表6は、世界各国において、石炭依存状態がどのように変化してきたかを示します。

脱炭素の論点3 図表6

日本だけが、この間に石炭火力をさらに増強してきたのです。

エネルギー安全保障のためには石炭火力の設備や石炭の備蓄は必要かもしれませんが、電力の脱炭素に最も効果のある 石炭火力の休止は喫緊の課題といえます。

ゆでがえるくん「日本でも少しずつ再エネ比率が上がっているんだケロ」

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国境を超えた有志連合の活動で世界はさらに変わる

気候変動対策にむけ、RE100(事業用の電力消費を100%再エネで賄うことを目指す国際的企業連合)など、多様な有志連合が世界中で結成され活動しています。

RE100の場合、2022年7月時点で、72の日本企業が、地域パートナーJCLP(日本気候リーダーズ・パートナーシップ)を窓口に加盟しており、アメリカ企業に次ぐ数になっています。

いま、世界のESG投資が日本を注視しています。CO2排出企業に圧力をかける投資家団体CA100+(クライメート・アクション100+)は、世界全体の温室効果ガス排出量の80%を占める166社(日本の主要企業10社を含む)に対し、温室効果ガス排出量削減を求めています(2022年)※4。

ゆでがえるくん「国を超えた企業の活動が世界の温暖化を防ぐんだケロ!」

[参考文献]
※1 松本三和夫[2012]『構造災 科学技術社会に潜む危機』岩波書店。
※2 JETRO[2022「ビジネス短信電力消費量に占める再生可能エネルギーの割合が増加(ドイツ)」。 ]
(https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/12/a8f91685d1ebdd11.html)
※3 ISEP[2022]「2021年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報) 国内の変動性自然エネルギーVREが10%超、急がれる化石燃料への依存度低減」。
(https://www.isep.or.jp/archives/library/13774)
※4 Climate Action 100+ HOW WE GOT HERE.
(https://www.climateaction100.org/approach/howwe-got-here/)

出典:『最新図説 脱炭素の論点 2023-2024』  序章④世界と日本の取り組みを比較する

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最新図説 脱炭素の論点 2023-2024

出版社:旬報社

著者 :一般社団法人 共生エネルギー社会実装研究所 (編著)
    堀尾 正靱(編集主幹)他

発売日:2023年5月29日

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